今回はリアンプ・ボックスについての記事を書きたいと思います。
オススメ宅録DI(ダイレクト・ボックス)3選の記事で少しふれたように、DAWが使用する信号とコンパクトエフェクターなどが使う信号には違いがある為、リアンプ・ボックスやダイレクト・ボックスなどが必要になります。
今回紹介するリアンプ・ボックスは1度DAWに入った信号を、コンパクトエフェクターやギターアンプ等に接続する信号に変換するために使用します。
その為、逆DIなどと呼ばれることもあります。
以下のようなことが可能になります。
- 演奏を先に録音しておいて後で音作りをすることができる。
- ボーカルやソフトシンセに、コンパクトエフェクターを使用できる。
- ギターやベースのアンプ前にオススメ宅録COMP(コンプレッサー)3選で紹介したような高級コンプが使用できる
僕はギターを演奏してきてコンパクトエフェクターをたくさん持っています!
録音の為にDAWを使い始めたんだけど、プラグインってなんか音に違和感を感じるんだよなぁ
レコーディングでアナログのエフェクターや真空管アンプを使用したいけど、後から音色を変更できるような保険を残しておけたら良いんだけどなぁ
使い慣れているコンパクトエフェクターが気軽に使用出来るのはとても良いですよね。
DAWの中のプラグインは便利ですが、慣れるまで少し時間がかかると思いますので、そのような意味でも導入はオススメできます!
色々なリアンプ・ボックスの使用方法を解説した後に3つの商品を紹介させていただきたいと思います。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
なぜリアンプ・ボックスが必要なのか?
プラグインのアンプシュミレーターを使用している方であれば、後から音色の変更ができるのは当然と思っている方が多いと思います。
ですがハードウェアのデジタルアンプや真空管アンプなどであれば、演奏をする前に音作りが必須になります。
録音してしまった後で、もう少し歪みをおさえておけば良かったと思っても、変更することはできません。
そこでオススメ宅録DI(ダイレクト・ボックス)3選の記事の中で紹介したダイレクト・ボックスを使用して、ギターの素のライン信号を録音しておきます。
接続の方法はこのような形になります。
ダイレクト・ボックスでギターのすぐ後の信号を同時に録音しておけば、後からリアンプ・ボックスを使用して音作りをやり直すことが可能です。
DAW側では同時にアンプ回線とDI回線の2トラックを録音していきます。
DI回線は初めに歪んでいないかの確認が済んだらミュートしておき、マイクで収録しているトラックのみモニターして演奏していきます。(デジタルアンプでも方法は同じです。)
その後、音色を変更したい場合はリアンプ・ボックスの登場です。
オーディオインターフェイスから素のラインを出して、リアンプ・ボックスに接続、DAWから出力されるライン信号を使用して音作りをして録音します。
このような方法をおこなうことで、アナログの機材でもアンプシュミレーターのような利便性を得ることができます。
一般的な使用方法はこのような形になります。
この方法だと、ギター直の音とリアンプ・ボックスから出てくる音は少し違いがあるので、音色を調整しないといけませんが、リアンプを保険程度に考えている場合はこの方法がベストです。
楽器録音の応用編
レイテンシーを128サンプルぐらいまで下げられるDAW環境をお持ちの方であれば、さらにリアンプ・ボックスを便利に使用する方法があります。
接続の方法を工夫することで、曲中の一部分だけ、録音やり直しや、音色を実際に演奏している音でおこなうことが可能になり、アンプシュミレーターと同じような感覚でアナログ機材を使用できるようになり、レコーディングを効率的に進めることが可能になります。
注意点が2点ほどあります。
- PCの中を2回出入りしている為、レイテンシーが通常よりも大きくなる
- 一度DAWの取り扱う信号の状態なるので、ギター直の信号とは音色が変わる
レイテンシーが大きくなると、演奏がしにくくなります。
オーディオインターフェイスのバッファサイズを可能な限り下げた状態で作業しましょう。
AVIDが新しいオーディオインターフェイスPro Tools | carbonを発表!DigiLinkを捨て、AVBを採用の記事で紹介したPro Tools | Carbonなどは、レイテンシーなどで大変有利なオーディオインターフェイスです。
また、録音する際はフリーズトラックなどを使用してプラグインを一時的にオーディオ化しておくと、プラグインの遅延などもなくなります。
ギターなどの楽器は、ハイインピーダンスと呼ばれるDAWでは扱わない信号の為、一度DAWの中に入った後の信号に違和感を感じる演奏者もいます。
色々制限はありますが、DAWと併用してアナログのアンプを使用できるので、トータルリコール面でとてもメリットが大きいです。
ミックスでの使用方法
リアンプ・ボックスはギターやベースの録音の際に主に使用される機材だと思われていると思いますが、ミックスの際にも大活躍する機材です。
世の中には無数のコンパクトエフェクターが発売されていて、プラグインではどうしても出せない質感を求めて多くの人が売り買いを続けています。
コンパクトエフェクターはギターやベースのインピーダンス信号を使用する前提で制作されているため、そのままではDAWに挟むことはできません。
そこでリアンプボックスを使用することによって、あらゆるデータにコンパクトエフェクターを使用することが可能になります。
例えばこんなことが可能になります。
- 生ドラムにBOSS / OD-1のディストーションをかける
- ベースにMXR / M148 Micro Chorusをかける
- アンプシュミレーターで作った音にVOX / V847-Aをかける
- ボーカルのディレイにLine 6 / DL4をかける
可能性は∞です!
DAWのプラグインは、0と1のプログラムでできている為、どうしてもアナログの不確定要素を表現することは難しいと僕は考えています。(だんだん精度は上がってきているとは思います。)
特にプリアンプ、オーバードライブ、ディストーション、ディレイに違和感を感じていて、その部分をコンパクトエフェクターに変更していくと効果は絶大です。
プラグインは数年に1度バージョンアップをしなければいけない製品ですが、安価なコンパクトエフェクターであれば故障するまでいつまでも使用することが可能です。(多少の故障は味になります。)
少し特殊な使用方法
こちらは楽器とアンプの間に、オススメ宅録COMP(コンプレッサー)3選の記事で紹介したようなラインレベルの機材を挟む方法です。
ラインレベルのエフェクターは、コンパクトエフェクターに比べると、大変高級な機材が多いのでいつもとは少し違った音質を楽しめると思います。
WESAUDIO / Beta76をベースに使用するなど、使用用途はたくさんあります。
それではオススメのリアンプ・ボックスを紹介していきます!
RADIAL / PRO RMP
シンプル設計で電源いらず
RADIAL / PRO RMP
パッシブタイプなので家庭環境のノイズをうけにくい
誰でも使用可能シンプル設計
とりあえずリアンプしてみたい方も安心のコストパフォーマンス
無着色
操作スピード
マニアック度
クール
シンプルでパッシブ(電源を必要としない)タイプのリアンプ・ボックスになります。
家庭環境はノイズの影響をうけやすい場所でもありますので、パッシブタイプはその点使いやすいとは思います。
とりあえず、リアンプを試してみたいという方にとって、コストパフォーマンスが素晴らしい商品だと思います。
Little Labs / Red Eye 3D phantom
DAWとコンパクトエフェクターの架け橋
Little Labs / Red Eye 3D phantom
リアンプボックスとダイレクト・ボックスの機能付き
複数購入して機能を拡張可能
1Uに収まるコンパクト設計
無着色
操作スピード
マニアック度
クール
Little Labs / pcp instrument distro 3.1より少し機能を限定した商品です。
DI OUTがMicレベルになっているので、購入なHAをお持ちの方であればこちらも使用しやすいと思います。
コンパクト設計で、持ち運びに便利です。
ライブ現場で比較的良く目にします。
僕はこちらのサイトなどで購入しています。
Little Labs / pcp instrument distro 3.1
DI機能付き、高機能リアンプ
Little Labs / pcp instrument distro 3.1
リアンプボックスとダイレクト・ボックスの機能付き
3つの回線で3台のアンプを同時に鳴らすことも可能
リアンプボックスの中で最高品質
無着色
操作スピード
マニアック度
クール
ダイレクト・ボックスとしても、紹介したpcp instrument distro 3.1です。
1台でダイレクト・ボックスとリアンプ・ボックスの機能を持っているので宅録環境のスペースを有効利用できます。
また入出力がそれぞれ3つもついている為、このような使い方が可能です。
このように、ミックスの最中でもアナログのアンプを鳴らしたまま作業を進めることが可能になります。
複数のアンプを同時に鳴らして混ぜることも可能です。
1台のアンプでは到達できない複雑な音色を作ることが可能です。
リハーサルスタジオでも、簡易的な衝立などを使用してブースをセパレートして録音をするのも面白いです。
同じ素材を使用した音がアンプからなっているので、かぶり(Gtr Amp1のマイクに入る、Gtr Amp2、3のアンプの音)はそこまで気になりません。
pcp instrument distro 3.1は高機能な機材なので、とても便利です。
ダイレクト・ボックスとしての機能に少し注意点があります。
入力のレベル調整ができないため、PRS Guitarsなどの、高出力のギターなどでは入力でレベルを受けきれない場合があります。
専用のアッテネータを自作して使用するか、高性能のボリュームペダルを使用してレベルを下げないと入力で歪んでしまうことになります。
僕はGMLのフェーダーを使用してレベルを下げています。
大型コンソールNEVE VRに付いていたフェーダーです!
こちらの商品もこちらのサイトで購入が可能です。
僕の使用方法
時間軸の変化を味方につけるの記事で少しふれましたが、僕は色々な素材にデジタルアンプとキャビネットシュミレーターを使用して音を加工することがとても多いです。
アンプ前にエフェクトの付いていないアプシュミレーター専用機
Positive Grid / BIAS MINI GUITAR
世界中のミュージシャンが作ったプリセットをダウンロード可能
真空管交換など細部まで改造が可能
ベースアンプも対応
音質
操作スピード
マニアック度
クール
Little Labs / pcp instrument distro 3.1から出力された信号をまずPositive Grid / BIAS MINI GUITARに入力します。
BIAS MINI GUITARはデジタルアンプで真空管の基盤なども改造できる面白いギターアンプです。
ベースアンプのシュミレーターも入っている優れものです。
特殊なエフェクターを使用したい場合はBIAS MINI GUITARの前に接続します。(アナログのSEND、RETURNには空間系のエフェクターを使うこともあります。)
DAWの中にある素材で加工したいものを選び信号を送ります。
ギターやベースはもちろんですがソフトシンセの音も送る事もあります。
BIAS MINI GUITARの中ではキャビネットシュミレーターは使用せず、アナログのキャビネットシュミレーターのPALMER / PDI-03を使用しています。
クリーントーンはアンプに勝てるかもしれない
PALMER / PDI-03
2つのアウト(キャビネット、歪み成分)で素早い音質調整が可能
キャビネットのタイプと大きさを変更可能
アナログ回路でレイテンシー削減
音質
操作スピード
マニアック度
クール
デジタルアンプとアナログキャビネットシュミレーターの組み合わせは、音質と利便性を考えると宅録環境の強い味方になります。
たくさんのアンプを素早く選択できて、キャビネットが駆動している感じを感じられます。
PALMER / PDI-03にはキャビネットをシュミレートした2つのアウトの他に4つのLineアウトがついています。
キャビネットアウトとセットで使用して、立体感を出したり特殊なエフェクターを使用したり、空間系のエフェクターを追加したりできます。
アンプが唸る感じを付加する
APHEX / EXCITER
低音と高音の倍音を調整
デジタルアンプの惜しい感じを軽減
アンプのデプス、プレゼンスのような音を付加できて質感、帯域を可変式
音質
操作スピード
マニアック度
クール
キャビネット信号にはさらに、リアルを追求する為にAPHEX / EXCITERを追加しています。
ギターアンプだと、デプスやプレゼンスというつまみに似ていると思いますが、キャビネットが床を揺らす感じの音や耳が痛いと思うような音の調整に使用しています。
デジタルアンプを使用されている方は是非導入して欲しい機材です。
僕はとても大掛かりなシステムだと思いますが、プリアンプ型のコンパクトエフェクターや真空管がついているタイプなど、色々な製品が発売されています。
プラグインとは少し違う質感を是非試してみて欲しいです!
まとめ
1台でリアンプとDIの両方の機能を持つ製品や、たくさんの出力を持っている商品などリアンプ商品は様々発売さています。
アンプ回線を作ったときに重要なことは、その回路を通って戻ってきた音と通らなかった音、2つを必ず聴き比べてから使用することです。
Mix師に重要な位相とはの記事で説明したような逆相を使ったチェックの方法でもいいと思いますし、自分の耳を信じて聴き比べる方法でも良いと思います。
実際にこの回路を通った音が好みでない場合は、この回路を使う事はデメリットになってしまうので、初めにテストをしておくことをオススメします。
納得のいくリアンプ回線が作ることができれば、その後は独創的なコンパクトエフェクターを手に入れ、複雑な回路にチャレンジしていくと面白いと思います。
KORGが開発しているNutubeやGamechanger Audioが開発しているプラズマを使用したディストーションのPLASMA Pedalなど、プラグインとは違った質感の商品がたくさん開発されてきているので、ぜひ試してもらいたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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