この世界にはたくさんの波があります。
皆さんが比較的、たくさん目にしている波は、浜辺の景色やおふろの小さな波だと思います。
音や光も同じように波をうって、僕らの耳や目に到達してきます。
音の波も海の波と同じで大きな波をおこすことができれば、大きな押し出す力を相手に与えることができます。
水の波のおこし方も少し工夫がいるように、音の波も工夫がいります。
少ない音数の楽曲では自分の納得するミックスが作るれるけど
音数が多い曲になると、それぞれの楽器を聞こえやすく整理することもできないし
迫力が薄れてしまったような気がする
なので最終的にマキシマイズリミッターでレベルを上げて納品してみた
こんな内容でずっと悩んでいませんでしょうか?
今回は音の波、位相の捉え方から、楽器の演奏のパワーを効率よく表現するというテーマで解説したいと思います。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
位相の概念をまず考える
DAWのWAVの波形、上方向の力はスピーカーを皆さんの方向に押し出す力です。
反対に下方向の力は、スピーカーを手前に引き込む力です。
実際に音を再生しながら、スピーカーのコーン紙を見てみてください。
小さく動いています。でも直接触らないでください。壊れてしまいます。
1番簡単にこの波の仕組みを理解するためには、リファレンスでいつも聴いている音源を使って逆相(位相を反転させた状態)を利用して確認すると分かりやすいと思います。
DAWにリファレンストラックを2つインポートします。同じ楽曲で大丈夫です。
片方のチャンネルにイコライザーを差しフェイズのスイッチをオンにします。
まず何も差していないトラックを再生します。
次にイコライザーを指している方のトラックを追加で同時に再生してみましょう。
音が消えてしまったでしょうか。
少しびっくりされたかもしれませんが、これは正しい動作をしていますので安心してください。
上方向の波と下方向の波が同時に再生されたことによって、波の力が打ち消し合ってしまい、何も音がでなくなってしまったということです。
DAWのトラックからはこのような信号が出ていることになっていて、+と-が等しく発音されています。
続けてイコライザーを刺したトラックを、少しずつボリュームを小さくしていってください。
最終的にイコライザートラックがボリュームが最低のレベルになった時。
いつものリファレンストラックの聞いている感じに戻ったはずです。
上方向の波と下方向の波が与える影響の変化がわかったと思います。
次はもう一度イコライザーをさしていたトラックをボリュームを、元の値に戻しまた無音の状態に戻します。
そこでイコライザーを指している方のトラックに、ディレイを追加します。
サンプル単位でもいいですし、1000分の1秒単位の1msでも大丈夫です。
少しづつ、ディレイの値を増やしていきます。
シュワシュワとした音を確認できたでしょうか。
このようにタイミングの違いが起きてくると、上方向の波と下方向の波の再生タイミングが変わってくるので、波に与える影響の変化がおきてきます。
また最初の状態に戻り、イコライザーとディレイを差しているトラックのイコライザーとディレイをバイパス状態にして再生します。
ボリュームが大きくなったことがわかりますでしょうか。
こんどは上方向の波が同時に2つなったことにより音量が大きくなりました。
それでは片方のチャンネルのディレイをオンにしてタイミングをずらしていきましょう。
またシュワシュワ音を感じたと思います。
音を聞く時、いろいろな場面でこのような影響を受けていることがわかります。
LとRのスピーカーの関係。
スピーカーに使われている2本のケーブルの長さや材質、経年劣化の影響。
部屋の構造等もそうですが、DAWの中で処理されている間で少しでも位相に変化があれば、このように原音とは変わった状態で再生されます。
ステムミックスを利用して、該当のトラックをミュートする
少し応用編ですが、後が楽になるステムミックス納品で説明したステムミックスと、完成後、お渡しするデータ(音源編)で説明したトラックダウンマスターを使用すると、トラックダウンマスターから色々なトラックを抜くことが可能です。
ボーカルミックスを逆相であてるとカラオケが出来上がります。
トラックダウンマスターの中のボーカルミックスは上方向、ボーカルミックスを下方向にして同時に再生したので、ボーカルミックスが聞こえなくなったということです。
このような手法を利用してイコライザーに頼ることなく音質を変化させることが可能になってきます。
ベースの2つのトラックを使用して音質を変化させる
よくベースのトラックが2本届くことがあると思いますが、この2つはそれぞれのトラックを使って音質調整が可能です。
例えばベースのアンプトラックで少し気にいらない帯域が出すぎていると思ったとき、ラインの音を使ってその気にいらない帯域を強調する信号を作り出し、逆相でアンプトラックに加えていくとその帯域を減らすことが可能になります。
もちろん複雑な音質の変化をするので、調整は必要ですが目の前にベースアンプがなっている感じを作るという意味では選択肢が広がります。
このような波と波の合体を表現していると考えると、どのポイントでリスナーに演奏の表現力を与えていくか。
波の圧力をコントロールしていると考えると、単純な周波数帯の調整の意味だけのイコライザー処理ではなくなってくると思います。
ドラムのマルチマイクの位相を考える
ドラムで1番わかりやすいのは、オーバーヘッドやトップマイクと、それぞれのマルチマイクの位相を確認するとわかりやすいと思います。
ドラムは、マイクの本数が多くなります。
それぞれの波の動きを注意深く聞いてみましょう。
もし、聞くだけだとわかりにくければ、今は波形を目視で確認しても良いです。
上方向の波と、下方向の波が様々あると思います。
どのように位相を調節するか考えながらフェイズ、ディレイやイコライザーを使用していくと、ドラムを立体的に配置することが可能になると思います。
一般的にはバスドラムを正相にして、追加するトップマイクをどちらの方向で足していくか。
バスドラムを踏んだときに、リスナーにスピーカーが向かって動いている方が迫力が出しやすいという意味です。
ギターのマルチマイクの位相を考える
ギターであれば3本ぐらいのマルチマイクで収録されているデータが届くことがあります。
代表的なセットはこの3本セットだと思います。
SHURE SM57
SENNHEISER MD 421-II
ROYER R121
SM57で核となる部分を収録し、MD 421でハイエンドとローエンドをフォロー、R121で空間や暖かさを表現するなど。
それぞれのマイク配置や距離感で、本当に様々に変化していきます。
位相を全て合わせるからいいというわけではなく、どのような音を作りたいかです。
それぞれのマイクの特性を確認しながら、加工していくと目的の音により速くたどり着けるようになると思います。
いくつかの位相調整プラグインを紹介
マイクポジションを調整することはエンジニアの技術の中では、たいへん奥深く。
演奏者のポテンシャルを最大限に生かすための重要な調整パーツとなっています。
フェイズやディレイを使用した、簡易的な調節方法もありますが、こちらのプラグインのように複雑な位相の調節が可能なプラグインも発売し始めています。
調整の作業効率やフェイズスイッチだけでは調整出来ない範囲を調整が可能なので僕は導入しています。
これらのプラグインを導入しながら耳で確認して、自分が出したい音かどうかで判断します。
実際にマイクポジションを動かせる!?
FLUX / Evo In
ドラムのマルチマイクをグループ化
マイクポジションを後から変更
ソフトサチュレーションで原音の息吹を復活させる
音質
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
位相を視覚的に捉えられる
WAVES / InPhase
修正後の結果が確認できる
波形をドラックで操作可能
素材間の関係性を確認できるCorrelationメーター
音質
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
Mix用とRec用オーディオインターフェイスを分けて考えるでUniversal Audio Apollo Twin XなどやUAD-2 SATELLITE THUNDERBOLT 3などを購入した方向けのプラグインですがかなり細部までコントロール可能なプラグインです。
細かな位相調整が可能
UAD / Little Labs IBP Phase Alignment Tool Plug in
0°〜180°まで細かな位相調整が可能
通常の調整では追いつかない、ドラムのマルチマイクを復活させる
見やすいボタン配置
音質
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
まとめ
レコーディングエンジニアであれば、自分で録音状態をコントロールできますが、Mix師は送られてきた素材の状態がどんなものでも、商品を完成させなければならない仕事です。
トラックに何か、エフェクターをかける前に、まず位相の確認から始めることを僕はお勧めいたします。
今回はMix師に重要な位相とはという内容で解説させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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