今回はコンプレッサーについての記事を書きたいと思います。
アナログ領域での適正レベル&音質調整(メーターの種類解説)の記事で解説したように、オーディオ信号には適性レベルが存在します。
ボーカルやアコギ、ピアノなど、音の大きい部分と小さい部分がとても幅広く表現される楽器の場合は、うまくこの適正レベルに収めることが難しいことがあります。
打楽器のようにピークのある楽器であれば、オススメ宅録HA(ヘッドアンプ)3選の記事で紹介したNEVE系の機材で、オーバードライブのような手法で適正レベルに合わせることがある程度可能です。
しかしボーカルやアコギ、ピアノなどの場合は、歪み過ぎてしまう場合があるのでオーバードライブのような手法はあまりオススメできません。
そこで登場するのは、コンプレッサーと呼ばれる機材です。
コンプレッサーは、小さい音を大きく、大きい音を小さくする機材です。
表現の幅を狭くすることによって、適正レベルに収めることをする機材のため、設定次第では表現を犠牲にしてしまうこともあります。
その反面コンプレッサーを通った音質が好まれている機材もあったりするので、とても奥の深い機材の1つだと言えます。
DAWのみで作業をされる方が増え、トータルリコールの重要性が上がっている今でも、ヘッドアンプとコンプレッサーだけは別途アナログ機材をそろえている方が多くいます。
録音する素材は、ボーカル、アコギなどが中心
ヘッドアンプは既に購入したので、アナログコンプレッサーを探している
そんな方に向けた内容になります。
いちど購入したら一生お付き合いできるような王道の製品をご紹介したいと思います。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
コンプレッサーの仕組み
実際にどのような仕組みか試していきましょう。
上はコンプレッサーを通っていない波形、下はコンプレッサーを通った後の波形です。
コンプレッサーを通ると大きい音が小さくなり、小さい音が大きくなっているのがわかりますでしょうか?
このような設定でコンプレッサーをかけています。
アタック→コンプが反応し始めるまでの時間(7が一番速く、1が一番遅いです。1176系は少し特殊な表示です。)
リリース→コンプが元の状態に戻るまでの時間(7が一番速く、1が一番遅いです。1176系は少し特殊な表示です。)
現在は一番反応が速い状態になっています。
一番反応が遅くなったらどんな音になるでしょうか?
設定はこんな感じです。
コンプレッサーがかかり始めるまでの時間が遅いため、大小のバランスが調整できないところが出てきています。
そして、いつまでもコンプレッサーがかかっているので音が伸びています。VUメーターもリダクションされ続けているので0の値まで戻ってくるのが難しくなっています。
音の感じが変わったのがわかりましたでしょうか?
このように設定を色々変更して、想像する音色に近づけることができます。
音の大小のバランスをとるのも重要ですが、波形の形を変化させることによって質感を変更することがコンプレッサーでは可能です。
レシオボタンのほうは比較的わかりやすいと思います。
4や8のほうがやんわり大小の調節がされるモードで、12や20は一定の値をこえると急激に調整が入るタイプのモードです。
メーカーが違いますが、このようなイメージでとらえて欲しいです。
カーブは色々なメーカーで違いがありますのでイメージとしてとらえてください。
このメーカーでは、KNEE(ニー)という値でなだらかなカーブにも変更可能です。
レシオ12や20になってくると、リミッターとよばれる機材に分類されることがおおいです。
仕組みはわかりましたでしょうか?
代表的なアナログコンプレッサーを紹介していきます!
WESAUDIO / Beta76
コンプの王様、この機材を知らないレコーディングエンジニアはいない!
WESAUDIO / Beta76
モード切り替えでUreiとUniversal Audioを1台で表現している?!
伝説の「Slam モード」4つボタン全押しモードも再現
1176系では1番好きです
オールマイティ
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
Universal Audioの製品をたくさん記事の中でオススメしてきましたが、現在Universal Audioが発売している1176LN Classic Limiting Amplifierは僕はあまり好きではありません。
Urei 1176LN Silver Face(Rev.H)の中古を購入するのが1番良いと思っていますが、現在数多く発売されている1176クローン系のコンプレッサーの中ではこちらの商品が1番好きでした。
モードのセレクトでVintage Modeを選択して使用します。
Modern Modeの方を開くとUniversal Audio / 1176LN Classic Limiting Amplifierのような音に思いました。
このコンプはレコーディングエンジニアであれば、全ての方が必ず使用したことがある、有名なコンプレッサーです。
スレッショルドのつまみはなく、インプットとアウトプットの調整でコンプのかかり具合を調節していきます。
レシオは5つのモードがあります。4つのレシオボタン全押しのSlam モードは購入したらいちどはやってみると面白いと思います。(ハードなリミッティングです。)
僕より20歳位上の先輩たちの中には、このコンプだけでレコーディングを済ませる方もいるほど、奥の深いコンプレッサーだと思います。
EMPIRICAL LABS / EL8X DISTRESSOR
現場に1台しかコンプを持って行けない場合はこのコンプを僕は選択します。
EMPIRICAL LABS / EL8X DISTRESSOR
384パターンものモード組合せが可能
1176伝説の「Slam モード」4つボタン全押しモードも再現
オールマイティティーで、コンパクト
オールマイティ
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
少ない操作パネルからは、全く想像ができないほどの高機能コンプレッサーです。
LA2、LA3、LA4、1176、dBX160、Fairchild IGFET、Fairchild 670、MEEK、DeMaria、SSLなどの数々のビンテージ機器のシュミレートを可能としていて商業スタジオであれば、ほぼこのコンプレッサーを所有している状態です。
これと同じ量の機材を準備しようと思うと16Uのラックが簡単に埋まってしまうほどの物量になるでしょう。
コンプレッサー選びに現在迷っているのであれば、このコンプレッサーを選択して後で後悔することは考えにくいです。
またコンプレッサーとしての機能だけではなく、テープシュミレーターとしての機能も持っているので、DAW中心のレコーディング環境でもアナログの質感をたしていくことも可能です。(レシオ1:1が選択可能です。)
ステレオで使用する事にもかなり配慮をしている設計なのでステレオペアで購入して、ドラムをまとめたトラックや、キーボード、トータルのマスターセクションにも使用可能です。
EL8 DISTRESSORもありますが、EL8X DISTRESSORのほうが僕は良いと思います!
4つボタン全押しモードは是非使って欲しいモードです!
TUBETECH / CL 1B
ステルスコンプ
真空管サンドが大好物の人にはこちらのコンプレッサーをオススメします。
ハイファイで温かみがあり、ナニュラルなサウンドが特徴のコンプレッサーです。
レシオは連続改変が可能なタイプなので繊細な調整が可能です。
このシリーズでアナログのマルチバンドコンプレッサーも発売されていますが、本当に素晴らしいコンプレッサーだと思います。(5弦ベースに最適です。)
僕はフェスなどのイベントで、事前にリハーサルがあまりできないような現場で、メインボーカルにCL 1Bを使用することが多いです。
バンドチェンジなどで急なレベルの過剰入力があった時に、音質的に耐えられると感じていて、何度も救われています。
まとめ
DAW中心でトータルリコール重視型の機材選びでは以下の3点が音質の大きな方向性を決定づけることになります。
- ヘッドアンプ(適正レベルを大まかに設定)
- イコライザー(音の方向性を調整)
- コンプレッサー(適正レベル付近におさまるように信号の小さいところと、大きいところの良いとこどりをする)
DAWに入る前にアナログ領域で適正レベルに調整する作業は大変重要です。
木材の加工で例えると、上記の3つの機材はのこぎりやチェーンソーであり、DAWのプラグインは、彫刻刀やかんな、紙やすりだと僕は考えます。
今回紹介したコンプレッサーがもしセールなどで販売されていてすぐに買ってしまっても、将来後悔をするような機材ではないと僕は思います。
またこれらのコンプレッサーはプラグインのパッケージ購入、機能の重複に気をつけるで紹介したUniversal Audioのプラグインでもエミュレートした製品が販売されています。
ぜひ購入前にデモをしてみて欲しいです。
今回はオススメ宅録COMP(コンプレッサー)3選という内容で解説させていただきました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
コメント