現在発売されている音楽の大多数が、完全な平均律を目標地点にして制作されていると感じています。
実際に制作している方達が意識してはいないと思いますが、DAWに付属している音源やチューナーを使用して音楽を作っている方が多いと思います。
音楽を作ろうと思う方が読むような記事に平均律と純正律の関係を説明した内容が出てきませんので、当然意識せずに制作していきます。
僕もこの件に興味が湧き出したのは音楽業界で働きはじめた後でした。
少し内容が難しいかもしれませんが、音楽制作の根幹とも思っていますので是非読んでいただきたいと思います。
簡単に言ってしまうと、
世の中の音楽は少しだけ濁った状態の物で溢れている
ということになります。
そしてこの事実をしらないままたくさんの人が、現在音楽を生み出している状況です。
一つの楽器でたくさんの楽曲を瞬時に演奏できるメリットの為に、綺麗な響きを犠牲にしてしまったまま、しかも現代の人はその事実も忘れてしまっているという。
ちょっと有名なアニメ作品に登場しそうなストーリーですが、現実世界で実際におこっていることです。
学問として音楽を学んだ方であれば当然ご存知だと思いますが、大変謙虚な方が多く、あまり自身の知識を押し付けるような事をする人は多くないと感じます。
静かに商業音楽の中で、耐えているという表現が適切かと考えます。
DAWの進化により、多くの人は音が目に見えると思っている方が増えてきましたが、
音は聞く物であって見る物ではない
という点でも、大きな誤解が生まれているような気もしています。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
純正律から平均律へ人々が移行していったストーリー
僕はこの長い音楽の歴史をこのように想像してます。
まだ録音技術もない時代の貴族は、音楽を常にライブサウンドで楽しんでいました。
娯楽の少ない時代、ライブは色々な場面で活躍する重要なパーツだったと想像します。
友達と食事をするとき、午後に紅茶を飲むときなど常に音楽家と一緒に生活して演奏をしてもらっていたと思います。
今僕は駅前の喫茶店でこの記事を書いていますが、クラシックを聴きながら大変リラックスした気持ちで空間を楽しんでいます。
このお店には演奏者がいるわけではないのでどこかのホールで録音された音源を聴いているのですが、当時の貴族は実際に演奏者と楽器が必要になります。
綺麗な響きを表現するにはきちんと楽曲A用にチューニングされた楽器が必要になります。
しかしその楽器では常に同じ雰囲気の楽曲しか演奏することができません。
当時の貴族も現在の皆さんと同じ用に、ライブの導入は静かな曲、徐々に激しい曲になり、エンディングでは感動して泣きながらライブを楽しみたかったはずです。
電子楽器であればたくさんのプリセットをボタン一つで複数のチューニングが可能ですが、当時はそんな技術はないので大変困ったことになっていたと思います。
実際にたくさんの楽器を並べた貴族もいたでしょうし、我慢して同じ雰囲気の曲だけを演奏したライブもあったでしょう。
しかし人間とは常に合理的な生き物なので、どの雰囲気にも対応したチューニングを開発し使用するようになっていきました。
この発明によって楽曲の幅は広がり、曲の一部に平均律によってチューニングされた楽器が使用されていきます。
管楽器やフレットレス楽器、歌などはその中でも自由に混ざり合いながら演奏を続けてきたと思います。
耳で音程をコントロールできる要素があるので、人間が気持ちがいいピッチに適応していける仕組みです。
平均律が主要になった後でも演奏者が響きを理解していたので、2000年くらいまではなんとかやってこれていたと感じています。
しかしDAWの進化とともに、2005年ごろから曖昧な平均律を続けてきた音楽業界に大きな変化がおこりはじめます。
音程修正ソフトの発売によって、現在の響きを忘れた人達が完全な平均律にむかって音楽を製造しはじめてきます。
曖昧な平均律である程度誤魔化されていた部分が、平均律から外れた音楽を間違いと捉えるシーンがうまれてしまったのです。
スタジオでは全自動で平均律の中心に音を移動する作業がおこなわれていき、歪みを意識する人も少しづつ減少していきます。
人間とは常に適応する生き物なので、響きということを考えることもなくなっていきます。
音程修正ソフトは、あくまでも平均律の中心を指していた網の目を表現しただけですが、人間は線の上が正解だと勘違いしてしまったようです。
現在の音程修正ソフトは純正律にも対応しているソフトもあります。
この現象は不思議と日本のシーンで強く僕は感じます。
しかし少し濁った音楽は必ず時間の流れと共に聴かれなくなっていくという点も大変興味深いです。
人間の脳は正直なので、響きという意味を理解していない状態でも自然と感じてしまうということなのかもしれません。
平均律と純正律の違いを少しだけ体感してみましょう。
綺麗な響きを体験するにはシンセサイザーを使用するとわかりやすいと思います。
皆さんが所有している物でも簡単に再現できますので、是非ご自身でも試してみてください。
2オシレーターが付いているシンセサイザーを準備してください。
今回はCに対してのEの音で確認してみました。
違いがわかりますでしょうか?
音のうねりに注目して調節します。
色々な波形のオシレーターで試してみるのも良いと思います。
このような小さなうねりが集まっていくことによって、楽曲単位では大きな歪みになっていきます。
さらにエフェクターなどで歪みを与えたりすると、更に複雑に絡み合い本来のハーモニーを相手に伝えることが難しくなっていきます。
耳で違いを体感することが重要で、大きな音でスピーカーから確認していくことが大切です。
本来のハーモニーを是非体感してみてください。
本来の3度の音って実は皆さんが想像しているよりも、ずっと元気な音ですよね!
まとめ
今回は音の響きが、現在の音楽シーンで失われかけていることについて解説してみました。
DAWの進化と共に、音を耳で聞くという当たり前のことを少し忘れかけているような気がしています。
音程修正ソフトの線の上が音楽の正解と勘違いしている方が多いかもしれません。
リスナーはタイミングや、ピッチが合っているかなどではなく表現者の発した感性を脳で体感しています。
表現者も本来の音楽の楽しみ方を思い出して欲しいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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