後が楽になるステムミックス納品

Mixの概念

2MIXの音源の納品が終了したら、今度はステムミックスと呼ばれるデータの納品になります。

ステムミックスとは、各トラックのグルーヴチェックで紹介したように楽器をいくつかのグループに分けて小分けのミックスを作ることです。

ドラム、ベース、ギター、ボーカルなどにまとめておくと、後で音量や音色を調整したいと思った時に誰でも作業が可能です。

ライブ演奏やTV収録、映画のタイアップなど様々な現場で使用されている方法です。

ライブに使用するカラオケ音源を提出したけど

微調整のたびに修正のお願いが来て

何度もカラオケ音源を作り直している

こんな内容でずっと悩んでいませんでしょうか?

今回はステムミックスのグループの分け方と、どのようなレベルを目指して録音すると良いか解説したいと思います。

それでは詳しい内容に入っていきましょう。



グループ分け

ドラム、パーカッション

ドラムはドラムキットとも呼ばれていて、いろいろな打楽器の集まりなので簡単にグループ分けが可能だと思います。

もし追加でダビングしているような部分があれば、それはライブでもパソコンから音を流す可能性もあるので別のグループにしておきましょう。

パーカッションも同様になります。


ベース

同時に2つの音が出ている場合を除いて1つのステムミックスで問題ないと思います。

素材がモノラルであれば、モノラル書き出しが好まれます。(シンセでステレオのベースもあるので楽曲ごとで考えていきます。)


ギター

1つの音色で1つのステムミックスでまとめる(マルチマイクはまとめる)とともに、PAN設定を保存しておいた方がいいと思うので1音色ずつステレオで書き出しておくと便利かと思います。(中にはモノラルでデータを必要としている方もいるので、事前の確認は必要だと思います。)


ピアノ

1つの演奏に対してマルチマイクで収録したりすることがありますが、これは1つのグループでまとめます。


ストリングス

こちらもピアノと同様に1つのグループでまとめます。

バイオリンやビオラなど楽器の種類がありますが、ステムミックスの微調整で各楽器の帯域を調整することができるため、楽器ごとマルチで書き出す必要はあまりないかと思います。


キーボード、シンセなど

パーカッション的な音色から低音のアタック音、空気のようなパッド、リード用の激しい音色など、内容は様々あるので1つの演奏ごとにまとめていくといいと思います。

レイヤーといって1つの演奏をたくさんのシンセから、発音をさせて音色を作る方法もあります。

同じフレーズの演奏であれば1つのステムミックスにするで問題ないと思います。


ボーカル

実際のライブでどのパートを歌うことになるかが、決まっていないことも多いので1パートずつ別々に書き出すといいと思います。


コーラス

LとRに同じ内容のコーラスを2つセットで録音することが多いので、そのLとRのセットを1つのグループにして書き出すといいと思います。

上ハモ、下ハモなど、メロディが違う物は分けて書き出します。後でそれぞれのボリュームをコントロールできるので便利です。



ステムミックスは、配信やCDのレベルと比べて基準値が違う

グループ分けができたところで、実際にステムミックスを落としていくのですが少し注意点があります。

今まで2MIXの音源を作るためにおこなってきたミックスは、配信サービスやCDの基準レベルに対しておこなってきました。

今回作成しようとしている、ステムミックスの主な用途はライブやTV収録になります。

ライブで使用されるトラックということになると、アナログ領域での適正レベル&音質調整(実践編)の記事で書いたような-16dB設定された0VU付近の音声レベルになっているとどの現場でも扱いやすい素材になってきます。

もしマスタートラックでリミッターなどの音圧大きくするエフェクターを使用しているのであれば、それを外すか設定を少し緩める必要があります。

それぞれの音量バランスもあるので全てを合わせる必要はありませんが、目安として覚えておくと良いと思います。

自分の後にPAエンジニアやMAエンジニアがまたミックスをするということになるので、後の方のことを考えておきましょう。

オフラインバウンスやフリーズトラック等の機能もあり、短い時間でステムミックスを書き出しする機能が増えてきていますが、完成後、お渡しするデータ(音源編)の記事でもいったように、DAWはバグがつきものです。

録音したデータは必ず耳で確認するようにしましょう。

納品するデータは頭合わせのWAVデータとテンポ、マーカー情報がふくまれたMIDIデータ

職業別DAW得意分野解説この記事で解説したように、職業によって色々なDAWを皆さん使用しています。

同じDAWを使用しているのであれば完成したデータをそのまま渡しても問題ありませんが、何年後に使用することなどを考えると、納品するデータは頭合わせのWAVデータとテンポ、マーカー情報がふくまれたMIDIデータがベストの選択だと思います。

このシリーズの冒頭、Mix師がデータを受け取ってから納品するまでで解説した頭合わせの方法を使用して納品します。



まとめ

ステムミックスを作成することによって、ほとんどの調整はその後の別の方達がしてくれます。曲の長さの変更だったり、ボリュームの調整だったり、お休みのメンバーのパートをパソコンからの再生など。

Mix師として、この楽曲の仕事は終了ということになります。

またこのようなステムミックスを作成しておくと、リミックスの作品を出す際などにも大変役に立ちます。

DAWやプラグインの移り変わりは激しく、何年かしてプラグインの仕様が変更になり設定していた音が変わってしまうことがよくおこります。

トラックメーカーなどはこのステムミックスを使用して新しいミックスを作成する事が多いです。

ただし大変時間のかかることなので、料金面のご相談は別途しておいた方が良いとは思います。

ステムは別料金!

今回で、Mix師がデータを受け取ってから納品するまでの概要をお話しできたと思います。

これを基本として今後も細かい内容をどんどん追加していきたいと思っています。

裏スタ
裏スタ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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