誰かの作品に関わるときに大切にしていること

Mixの概念

僕が普段誰かの制作物に関わるときに、重視していることがいくつかあります。

  • ミックスや、トラックを作っていたとしてもその作品は僕の物ではない
  • 相手の感覚をインタビューしていき、感情の変化を引き出していく
  • 現在チームが注目しているパーツ以外に注視しておく
  • 自信をもって作品を世の中に発表する気持ちが一番重要
  • 僕が関われるのはこれが最後と常に思いながら向き合う

何年も作品を作り続けるアーティストは、作品を出す度に歴史を刻んでいくことになります。

規模が大きくなっていけば、発表のタイミングの重圧が計り知れないほど巨大になっていることかと思います。

チームには言えない悩みを個別で聞くことも少なくありません。

音楽を仕事にする場合、司会進行の能力もある程度必要になると思っています。

裏スタ
裏スタ

それでは詳しい内容に入っていきましょう!



ミックスや、トラックを作っていたとしてもその作品は僕の物ではない

音楽業界で働く人の動機は、多くの方が本当は表現者になりたかった人がとても多いです。

実際に楽曲をリリースしていた人もいれば、行動に移せなかった人もいます。

人生設計を考えた上で裏方という道に進んだのですが、裏方の道で成功をしてくるとどうしても過去の思いから誰かの作品に自分の夢を押し付ける人がいます。

当時自分が好きだったジャンルや音楽の様式にこだわり、曲の方向性を曲げてしまう。

この行為はとても問題だと思います。

新しい曲は、過去の曲のコピーではなく現状の表現者の感情のコピーです。

最終的な正解は表現者にしかわかりません。

機械を操作することが苦手な方達が、僕達にオーダーをしてきているだけです。

本人の視点にたって、見えている景色を常に確認する必要があります。

本人が気にしない部分があれば、リスナーの心地よさも取り入れていきバランスを整えていく仕事だと思っています。

相手の感覚をインタビューしていき、感情の変化を引き出していく

表現者がデモ音源を作成したときには、形が出来始めた曲の意味を理解できていないことも多々あります。

レコーディング中にそれが判明しないこともあり、それがライブで判明することも多いと思います。

曲を構成しているそれぞれのパーツにどんな意味があるのか、一緒に組み立てながら想像していきます。

最近では、同じ場所で音楽を作る機会が減っているので、チーム全体に相手の感情を考える力が重要になってきています。

これまでに会話した内容や、歌詞を参考にして機械の設定を続けています。

何度も同じ議論をすることもありますが、Mix師はたくさんの分かれ道を一緒に歩ってあげることも重要と考えます。

現在チームが注目しているパーツ以外に注視しておく

楽曲が完成に近づくにつれて、議論は白熱し話題の中心になるパーツが出てきます。

中心となるパーツの話をしているのですから、普通の人はそのパーツの音に注目して聴いてしまいます。

僕は、逆の音楽の聴き方をしていることが多く、オーダーを受けてから機械を操作するときも同じような手法をとることが多いです。

ミックス最中での会話から説明します。

宅録君
宅録君

Bassが小さいと思います!

裏スタ
裏スタ

ここでBassを上げるだけであれば誰にでも出来ることです

他のとのバランスを考えながら

Bassが小さいと感じた、原因を他のパーツから考えそのパーツを修正します

宅録君
宅録君

Bassが良く聞こえるようになりました!

裏スタ
裏スタ

今回の変更によって、ドラムの聞こえ方が変わったけどそれは大丈夫ですか?

このような工程を繰り返し制作物を仕上げていきますが、リスナーはこんな聴き方はしません。

純粋にたくさんの表現者を並べて、プレイリストを作ったりします。

良いと思った作品には「良いね」を押すだけです。

チームが白熱する議論をしている最中には、リスナー視点も必要になってくると考えます。

アルバム全体のことであったり、これまでのグループの歴史や未来のこと、ライブで演奏する時のことなど色々なことを考えます。

自信をもって作品を世の中に発表する気持ちが一番重要

リスナーに対して、自信を持って発表できる気持ちは本当に伝わっていきます。

作品を作っているときの感情は必ず作品に影響をしていて、どんなに隠しても覆い隠せない物です。

制作中の空気感、その時のニュース、夜ご飯を食べるときにした雑談など、色々な要素が作品に込められてしまいます。

僕が制作物は感情のコピーと考える理由はここにあります。

何かの外的要因によって、納得できない作品が完成したとしたら発表する際に必ずその感情が漏れていきます。

僕が関われるのはこれが最後と常に思いながら向き合う

作品を作り続ける行為は、本当につらくもあり、楽しくもあり、困難な道です。

良い作品ができれば、自分のハードルが上がり、次の作品までのプレッシャーが上がっていきます。

新しい物を生み出せない時期は日々、苦しい毎日です。

このアップダウンから解放されるには、歩みを止める以外方法はありません。

その瞬間は、誰でも自由に選択できるのでいつ決断をするのかは、本人にもわからないと思います。

リスナーもそうだと思いますが僕は作品に関わる場合、常にこれが最後と思いながら一緒に作業をしていきます。



まとめ

現在は全ての作品に点数がつけられ、芸術をランキングで採点するような文化が主流です。

商業的な意味では、この仕組みを活用して経済が回っていきます。

一方リスナーはシンプルで、良いと思った作品を聴く。

それだけです。

サブスクリプションのプレイリストを見ると、現在売り手が売りたい物とリスナーが聴きたい物の差がどんどん大きくなっていると感じます。

表現者は苦しい時期を乗り越えて、少しづつ感情のコピーを発表していきます。

発表の瞬間に最高の感情でステージに立っていられるような作品を一緒に完成させる仕事。

Mix師の仕事とは初めてのデートに着ていく服を一緒に選ぶような感覚に近いのかもしれません。

裏スタ
裏スタ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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