スタジオのレイアウト変更していたら一番初めに作ったCDが出てきた

Mixの概念

久しぶりにスタジオのレイアウト変更をしていて、僕が一番初めに作った思い出のCDを聴く機会がありました。

随分昔の作品で、僕の技術も使用していた機材も現在とは違いますが、色褪せない魅力がありました。

新しいニュースや商品を購入したとしても自分の音楽は進化しているかという点を注意して欲しいと日頃から思っています。

資本主義が消費のサイクルの元に回っていることを否定するつもりはありませんが、何かの縁で僕のブログに辿り着いた方には、効率的にお金を使って欲しいと思っています。

裏スタ
裏スタ

それでは詳しい内容に入っていきましょう!



当時使用していたDAWはCubase SX

安価なレコーディングスタジオはまだあまり存在していなかったので、リハーサルスタジオに機材を搬入して、リハーサルスタジオにあるSHURE / SM58SHURE / SM57のみで録音していました。

同時に録音するHAやオーディオインターフェイスも所有していなかったのでドラムも4chで録音していました。

ハードウェアのMTR時代から4chでドラムを録音するという事が当たり前だった僕としては特に困難な事ではなく当たり前の日常でした。

チャンネル数が少ないという事は録音した後の音像の方向性の変更は難しいですが、デメリットだけではありません。

マルチマイクの位相乱れが少なくなる為、素晴らしい演奏と的確な位置にマイキングが出来ればマルチマイクよりも有利な音像に到達出来ます。

現在の録音では、ドラムキットの点数の数だけマイクと回線を準備するのが当然だと思っている方が多いですが大きなデメリットもあるということも忘れないでいて欲しいです。

もし何かのキットの音が小さい時は、プレイヤーがその楽器の音量を大きく鳴らせば良いわけで、エンジニアが調整できるのは楽器の鳴りではないという事です。

エンジニアはモノラルなのか、ステレオで音像を収めたいのかを決定した後に収録しきれない音がある場合にマイクを追加していくという基本を忘れないでほしいです。

プレイヤーが納得がいくまで録音する

当時の僕は、波形編集という概念がありませんでした。

ハードウェアMTRからDAWに移行したのですが、独学で全てを学んでいたこともありプレイヤーの演奏を修正する為に編集ウィンドウがあるという認識がなかったのでプレイヤーが納得するまで何度も録音を続けていました。

何日も録音を続けていくので、プレイヤーも楽曲をどんどん自分の物にしていきます。

肉体的な意味でも、10テイク録音した後の演奏は翌日の1テイク目とは意味合いがかなり違います。

レコーディングとは常に70%程度の演奏しか出来ないような物なので、日々の練習を怠っている人は絶対に普段よりも素晴らしい演奏が出来る訳はありません。

こういった意味でも、現在の取り敢えず演奏しました的なレコーディングよりも素晴らしい演奏が録音出来たのだと思います。

当時のプレイヤーも修正をするという認識がなかったので、レコーディングの当日までに毎日練習を重ねていたと思います。

業界標準のDAWが音楽にとって1番良い音を収録出来るソフトとは限らない

音声を編集するソフトで現在1番のシェアはAVID / Pro Toolsです。

当時僕がCubase SXを選択した理由は、金銭面でこれ以外選択肢が無かっただけです。

その後録音を職業にする事になり、MacPro Tools 6.4を購入するのですが音質の劣化に衝撃を隠せなかったです。

AVID / Pro Toolsの良さは、波形編集のスピード感だけで、プロデューサーが現場を素早く終わらせる事に特化していったソフトという認識が僕にはあります。

AVID / Pro Toolsが業界標準になる前、商業スタジオごとにスタジオの音の特性があったと聞きます。

大型ミキサーの選択肢はいくつかしかありませんでしたが、スタジオで働いているメンテナンスエンジニアが、スタジオ専用の改良を重ねていき、レコーディングエンジニアの要望に答えながらより良い音質や効率性を求めて世界にひとつだけのDAWを開発していくような事だったと思います。

僕はDAWに移行する前は、民生機のハードウェアMTRを使用していましたが民生機にも音像の傾向がありました。

現在のAVID / Pro Toolsは改良を重ねていきやっと、当時のCubase SXぐらいの音像にはなってきたと思いますが、DAWの中は64bitなどの技術に進化している製品もあります。

AVID / Pro Toolsが常に映画業界の音声ソフトという概念で開発されている以上、音楽的な進化は一歩常に遅れて更新されていくかもしれません。

HAとマイク以外のほとんどの機材は音を破壊しながらコントロールする機材

色々なプラグインが発売されてきたが、音を加工する時に必ず破壊を伴う機材である事を認識する必要があります。

イコライザーやコンプレッサーは常に調整をする際に、他の何かを犠牲にしながら方向性を変更していきます。

当時の僕が使っていたPCではプラグイン処理できる内容がある程度しかなかったのでシンプルな物しか使わず録音時にマイキングを何度も変更しながら最適な場所を探す努力をしていました。

アナログ領域は解像度が無限大という意味も含まれるが、なんでも出来るプラグインは大きな代償を払って音を破壊しながら加工を可能にしているということだと思います。

ドラムのサンプル加工などが1番わかりやすいとは思います。

音楽の中心に打楽器のどのパーツを持ってくる必要があるかを、多くの人が勘違いしている状況かもしれません。

自動でリダクションを調整するリミッターを導入した後の音楽は大きな違いがある

日本の音楽業界はWAVES / L2を導入した後に、本来の音楽を見失ったまま、現在もつまった音楽のような何かを製造し続けているようです。

WAVES / L2を始めとする、いわゆるかまぼこ状態の波形を作り出すリミッターは本来の使用用途を勘違いされたまま現場で使われ初めてしまいました。

公共の放送などで絶対に超えてはいけないデジタルクリップを防ぐ為の製品としてはとても素晴らしいプラグインですが、音楽で使用するとなると意味合いが大きく変わってきます。

常に道具には罪はなく、使用する側の問題だと僕は思いますがこの道具が自然界では絶対におきない現象を作り出していることは間違い無いです。

WAVES / L2は大きな音がタイムライン上でくるとわかると、リミッターのかかり具合を深く自動調整して、大きな音に備えます。

小さな音がくるとわかると、リミッターのかかり具合を弱くして小さな波にはあまり影響がないように自動で調節されます。

本来大きな音は相手に大きな音だという印象を与えたいプレイヤーの想いから発生している物で、小さな音との対比でプレイヤーが感情を表現しています。

エンジニアは、その感情の変化をそれぞれのサービスに合わせてパッケージする仕事なのですがドラムサンプルやWAVES / L2などのリミッターはプレイヤーの感情のカーブを歪めてしまう可能性があることに気がついていない方は多いと思います。

しかも最近お定額配信サービスは、その辺りもある程度想像して作られている仕組みに僕は感じています。

ラウドネスメーターなども、ユーザーが音量の調節を何度もしなくても良いように開発された仕組みです。

当時はWAVES / L2なども使用していなかったですし、存在も知りませんでした。

マスターセクションに何も刺さない状態でミックスを終えるということは、各トラックの調整に真剣になるということだったと思います。

あくまでも、マスターセクションに何かを刺すということはミックスの選択の一部であってデフォルトで決まっていることではないともう一度考え直す必要があるように感じています。



まとめ

今回は僕が初めに作ったCDを久しぶりに聴いて、自分も含めた現在のエンジニアが失いかけているミックスの意味を再認識するような内容になりました。

録音技術の進化の点で、ある程度年代の古い作品を聞くと同じような傾向があると思っています。

技術の進化は良い面もあると思いますが、音楽がどんな意味で存在しているのかを忘れてまで使用しなければいけない物かどうか、エンジニアが判断を誤ってはいけないことでしょう。

定期的に初心に帰る為に、このCDをいつまでも大切に持ち続けると思います。

裏スタ
裏スタ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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