先日UNIVERSAL AUDIOから驚きのニュースが発表されました。
UNIVERSAL AUDIOは小型のDSPをPCにドッキングさせることによって、PCのCPUの負荷を軽減させる商品を開発してきました。
彼らは1176系のコンプレッサーで大変有名な会社ですが、UAD Satelliteを開発し商業スタジオに置いてある数々のレコーディング機器をデジタル上で再現していきます。
その後Apollo系のオーディオインターフェイスとUADが一体となったシステムはコストと利便性でプライベートスタジオや宅録環境で注目を集めていきます。
僕がオススメのオーディオインターフェイスを聞かれた時に必ずラインナップに入れる商品の一つです。
しかし、プロのエンジニアの中ではUADは録音時にレイテンシーの問題で使用することが出来ないという部分が問題になっていきます。
外部のDSPを使用するこの仕組みでは、CPUとDSPの通信の関係でどうしても遅延が大きくなってしまいます。
アーティストの皆さんが録音をする時に、日常的に話し合っている時間の単位は1/1000秒です。
真剣に演奏をされるとき、4/1000秒以上のシステムの遅延はプロの業界では使用することはできません。
CPUが進化してきた現在でも、AVIDのProToolsシステムが商業スタジオで使用される理由はこの部分が大きいです。
UNIVERSAL AUDIOのプラグインはミックスの作業では人気を集めていきましたが、エンジニアの中には、同じく人気のPlugin Allianceの製品に移行していく方も多かったです。
Plugin Allianceの製品はAVIDのAAX DSPでも稼働するプラグインが多いので、遅延問題を気にせずレコーディングの様々な場面で使用することが可能です。
UADはスタジオで使用されるエフェクターのプラグイン化がある程度完了したあたりくらいから、目新しさも減っていきUAD離れを始めるエンジニアも増えていきました。
そんな中CPU上で駆動可能な、UAD Sparkを発表します。
新規ユーザーはサブスクでプラグインを月額購入可能で、既にUADでプラグインを保有している方は既にプラグインのライセンスが配布されている状態になっています。
今後どのくらいのDSPプラグインがCPUで対応するかはわかりませんが、レイテンシーがDSPよりも圧倒的に少なくなっているので今後に期待ができます。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
早速CPUベースのプラグインを使用してみた
DSPとCPUで同じプラグインを立ち上げて使用してみました。
インテルCPUのMacで試しています。(Windowsの対応はまだのようです。)
音質の確認
プラグインの見た目は少しだけ違いがありますが、DAW内での使用感はほぼ変わりません。
逆相チェックをしてみても無音になります。
DAW上のバイナリデータでは同じプラグインということになります。(計算上は同じ音を出しているという意味で、とりあえずは同じ音声が出てくるという理解で今は良いと思います。)
このバイナリ上は同じという部分は後日別途記事を書きたいと思います!
レイテンシーの確認
次に注目して欲しい点は各トラックの遅延補正の値です。
上のトラックがUAD Sparkで、下のトラックが、従来のDSPです。
55サンプルと1143の違いがあります。
このセッションは48kHzなので1/1000秒は48サンプルです。
UAD Sparkは大体1/1000秒ぐらいの遅れがあることになります。
これであればレコーディングでも使用できる可能性が出てきました。
当然AAX DSPなどのスピードには勝てないとは思いますが、ネイティブ環境のCPUベースを使用している方であれば色々な恩恵を受けることが出来そうに思います。
フリーズ機能やオフラインバウンスのスピード比較
UAD離れの原因になった、もう一つの理由がオフラインバウンス時のスピードの遅さでした。
今回の動画の後半で、UAD SparkとDSPのフリーズトラックのスピード比較をしています。
CPUベースのプラグインは内部完結しているので比較的どのプラグインもスピードが速くフリーズが可能です。
最近のライブでは、アーティストが演奏しないトラックをPCから再生することが多いのでステムデータというグループ分けした音源を別途書き出します。
ステム作りのスピードアップという意味でも効率化が期待出来そうです。
対応しているプラグインはまだ少ない
まだUAD Sparkに対応しているプラグインは少ないようです。
負荷がかかる複雑なプラグインの対応が可能かどうかが今後に大きく影響してきそうです。
今後の開発に期待しています。
UNIVERSAL AUDIO系のオーディオインターフェイスの入門機種
今回改めてUNIVERSAL AUDIOの製品のコストと利便性のバランスが良いと再認識しました。
厳密にいうと正確なモニター環境を作るという部分ではRME製品には勝てないと思いますが、アレンジャーさん、歌い手さん、トラックメイカーさんには素晴らしい製品だと思っています。
一番コンパクトなタイプではこちらの製品がオススメです。
ギターアンプやヘッドアンプのモデリングなどをオーディオインターフェイスの中で駆動させる事ができる
Universal Audio / APOLLO TWIN X
たくさんのビンテージ機材を安価なコストで試すことが可能
メンテナンスをしていない実機であれば、音質でも勝てる場合がある
プリセットを保存しておき、お気に入りのアンプセッティングなどをすぐに読み出すことが可能
無着色
操作スピード
マニアック度
クール
その他のラックタイプの製品をドッキングすることも可能ですのでこちらから購入しても無駄にはならず将来の拡張性もあります。
机の上にUniversal Audio / APOLLO TWIN Xを設置して、少し離れたところにラックタイプの製品を設置するというようなことも可能です。
連結していくと内部のDSPの数も増えていきます。
トークバックもついているので、モニターシステムを別途作る必要もないです。
まとめ
UNIVERSAL AUDIOがUAD SparkというCPU上で駆動するプラグインを発表しました。
サブスクタイプでの購入が可能なので、導入しやすいかと思います。
今までUADを使用してこなかった方もUAD Sparkをトライヤルで試していただければと思います。
現在DAW業界は、CPUでもDSPでも駆動可能なプラグインに急速に業界が移行していっているように僕は感じます。
新しいCPUの開発があまり進んでいない現在、パワーが足りなくなったらDSPを追加で接続するだけで簡単にパワーが手に入るようなシステムがユーザーに支持されるのは当然だと思います。
音楽はレイテンシーが大きく影響する業界です。
AVID優勢のシーンも、ネイティブ側の追い上げが進んでいくことでそろそろ業界のメインDAWも変化が近いとも思っています。
今後の開発が大変楽しみなニュースでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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