マルチマイクは一つの音源に対して複数のマイクを立てていき、それぞれのマイクの特性を活かした音作りをしていく方法です。
普段マイクで収録された音を加工していく際に、イコライザーを多用していると思います。
イコライザーは音を加工する際にどうしても、音を破壊してしまう機材です。
録音を終えてしまった後で、軌道修正ができる点は大変便利なのですがデメリットも大きいです。
あらかじめ音の方向性がわかっている場合は、マルチマイクを使用して想像している音に近づけていくことができます。
しかし使い方を間違えると、思いもよらぬ逆効果が発生してしまう方法でもあるので利用する場合は慎重に行う必要があります。
マルチマイクを導入する前に必ず位相と言う概念について理解しておくことをオススメいたします。
将来録音技術も向上していきたいレコーディングエンジニアを目指す方向けの内容となっております。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
位相と音速という概念を理解しておく
音は空気の中を進んでいくときに一定の時間がかかる性質を持っています。
大体1秒間に340メートル進むことになっています。
音程の低い音は大きな波、音程の高い音は小さな波の形で発音した場所からマイクに向かって波がゆらゆら近づいていきます。
このように波の上下動を繰り返しながらマイクに音が近づいていきます。
慣れてくると音速の値から、波の上下の位置を予測することができるようになります。
初めのうちは、マイクを取り敢えず立ててDAWに録音してそれぞれのマイクの波の形を確認してみるとわかりやすいと思います。
上がSHURE SM57でSENNHEISER MD 421-IIの波形です。
この波形を拡大していくと波の形が微妙に違うのがわかりますでしょうか?
マイクの特性や設置場所によって同じ音源を録音しても違った形になってきます。
この波の状態がずれている場合は、マイクの設置位置を少しずらしてまた録音してみるということを繰り返します。
位相を合わせるということの意味が少しずつ理解できると思います。
この考え方は、ドラムでも、シンセでも同様の考え方ができます。
イコライザーやコンプレッサーに手を出す前に、まず波のチェックから行うということを忘れないようにしてください。
マイクのダイヤフラムで距離を合わせる
マイクの距離を合わせていく時に気をつけて欲しい点は、マイクと音源の距離は音源とマイクのダイヤフラムとの距離で決まるということです。
SHURE SM57だと、グリルというパーツの中にダイヤフラムが入っています。
暗いところで、懐中電灯などで照らすと中を確認できると思いますので新しいマイクを購入した際は必ずダイヤフラムの位置を確認しておくと良いと思います。
マイクのグリルの表面を合わせても、位相を合わせることはできません。
グリルはダイヤフラムを守るカバーの役目をしている部品なので、音を集音している部品ではないということです。
マルチマイクを使用する際は注意しましょう。
マルチマイクの効果を確認してみる
ギターの定番セットで、マルチマイクの効果を試してみましょう。
- SHURE SM57(音の芯の部分を出す)
- SENNHEISER MD 421(低音と高音部分の補助)
- ROYER R121(空気感の調整)
は人気のマイクセットです。
ROYER R121は空気感の調整なので、位相を合わせる必要はそこまでありませんが音量を大きくする場合はフェイズスイッチなどを使いながら少しづつ音を加えていくと良いと思います。
足していくマイクの量を増やした時に、どのような変化があるかを注意深く確認していきます。
大切なのは自分が良いと思う音に近づいているかを聴きながら調節するということだと思います。
まとめ
マルチマイクは、イコライザーとは違い原音を破壊せずに音質を調整できる便利な方法です。
位相という概念を理解していくと、音楽を時間の経過として認識できるようになります。
この考え方は、ドラムにも、シンセサイザーにも当てはめられる考え方なのでミックスの考え方にも応用することができます。
さらに応用編ですが、必要のない帯域を逆相で加えることによっていらない帯域をカットするようなことも可能です。
ドラムの場合は、マルチマイクの数や角度などが増えてきますので更に難易度は高くなっていきます。
大切なことはマイクを増やした時にどのような効果を狙って増やしたのか、ということを常に考えながらマイクを混ぜていくことが重要になってきます。
是非、色々なマイクの組み合わせに挑戦してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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