今回の記事はボーカルとオケのバランスに大きく影響する重要なポイントになります。
ミックスの完成が近づいてくるにつれて
歌詞が聞き取りにくくなっていくような感覚があり
最終的に歌い手さんからボーカルを上げて欲しいといつも言われてしまう
こんな経験はありませんでしょうか?
この帯域はMasteringはMasteringサービスにお任せ(Masteringプラグインは購入しない。)で紹介したエンジニア達が、必ずといって良いほど処理をしてくる部分です。
マスタリングが終わった後の音源を聴いて、高音が痛く感じた経験などがあれば是非読んでいただければと思います。
僕はボーカルや、旋律を奏でる楽器以外がこの帯域に実音で存在している状態をよく思っていません。
今回はオケのトラックの中で本当は高音を必要としていないのに、ボーカルの帯域を占領してくる可能性があるトラックについて解説していきたいと思います。
ツイーター
高音専用の音がでる部分をツイーターといいます。
この部分からボーカルの存在感を発揮する重要な音が出てきています。
同時に、オケのトラックからもこの部分にも音を発生させる事が出来るトラックがあるのでうまく処理をしないとお互いが干渉してしまい。
歌詞が聞き取りにくく感じる、ボーカルが小さく感じるなどの現象がおきてきます。
その部分を補うために、ボーカルを過度にEQしたり、エキサイターを追加したりする方法もありますがオケトラックの方を処理してしまう方がより効果的と僕が考えています。
緩やかなハイカットフィルターを使用してQのポイントを移動してみると、ツイーターから音を出さないという意味はなんとなくわかると思います。
いくつか、ツイーターに被ってくるトラックを紹介したいと思います。
エレキギター
かなりの確率で、エレキギタートラックはツイーターを占拠している事が多いです。もしハイカットを入れていったときに高音やエッジのような部分が少なくなったと感じだ場合はなるべく高級なEQで以下の部分を補ってみましょう。
一箇所ずつ試してみてください。
8kと10Kの部分それぞれ別のギターの成分が補われてきます。
プラグインのパッケージ購入、機能の重複に気をつけるで紹介したFabFilter Pro Bundleに含まれているPro-Q 3で、リニアフェイズタイプのEQはあまり原音を損なわず処理をしてくれるのでよく使用します。
ソロなどのパートで、ボーカルがお休みしている時に出てくるギターは高音は出ているままで問題ないと思います。
ピアノ
帯域が幅広く処理が難しい楽器だとは思います。どのような役割かを良く確認する必要があります。補佐的なアレンジの役割をしている場合には、ハイカットを入れていくのも問題ないと思います。
しかし、ピアノとボーカルが主人公になっている場合、EQなどでは処理をせずプラグインのパッケージ購入、機能の重複に気をつけるで紹介したUAD Ocean Way Studiosを使用してReMicをする事が多いです。
ボーカルとの関係性をツイーター基準で考え直すとなると、そもそも収録する時のマイキングの方向性が変わります。
ボーカルの少し後ろに、ピアノを配置するような感じでマイキングすると音階的に上下に演奏していても気持ちよく配置できると思います。
MIDIから作り直すような方法もありますが、その音色を作った方の思いがゼロになってしまうので僕は音源の差し替えはミックスの依頼のときはおこないません。
UAD Ocean Way Studiosにはギターのキャビネットのプリセットもあるので、ギターソロの空間を広げるときなどにも使用できます。
ドラムの金物関係
シンバル関係で、かなり高音のきつめの音色が届く事があります。しかし、そのシンバルの音色が気に入って使用している。ハイカットを入れすぎると音色が変わってしまう。
音量を下げると、ミックスの確認の時にシンバルを上げたいという話に当然なってしまいます。
そこでディエッサーという物を使用します。ボーカルのサ行の言葉をおさえる為に使用する方が多いこのエフェクスターですが、一定の値に達した時だけかかるフィルターで、リダクションされていない時はフィルターがかからない仕組みです。
シンバルを叩いた時のピークが来た時だけ、痛いと思う部分3kHz〜5kHzくらいの間を探して設定します。
僕はMassey Plugins Inc.のDe:Esserを使用しています。
ドラムのディエッサーに最適
Massey Plugins Inc. / De:Esser
フリケンシーの自由度が良い
スピードやレスポンスの調整が可能
見やすいボタン配置
音質
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
FabFilter Pro Bundleに含まれているPro-Q 3でもアクティブEQが同じような機能を使用できますしPro-MBでも1つの帯域を指定すれば、同じ事が設定可能です。
これと同じ設定をトップのマイク、ルームのマイクなどにもやんわりと設定していって全体のキットの痛いと感じる部分を少しづつ小さくしていきます。
その後のドラムのマスタートラックにリミッターをかけても、金物が先に派手になってくる症状をおさえられると思います。
激しい音色のシンセ
ダンスミュージックを中心に、張り付いた音色が流行っていますがボーカルに与える影響は凄まじいです。
ローカットとハイカットフィルターはもちろんのこと。
ボーカルを守る為に、120Hzと3kHz〜4.5kHzのどこかカットするとボーカルがよく聞こえてくるポイントを探してカットしてみましょう。
あまりにも前に出過ぎている音色と感じるようであれば、1kHzあたりもカットしても良いと思います。
実音の処理をしたら、存在を少しやわらげる必要も必要だと思います。
プラグインのパッケージ購入、機能の重複に気をつけるで紹介したSoundtoys Soundtoys 5に含まれるMicroShiftなどは、大変有効だと思います。ほんの少しだけでもリバーブのようにセンドで追加すると音楽の出汁のような効果が期待できます。
H3000のリッチコーラス抜き出しなのか?
Soundtoys / MicroShift
存在感が滲みながら大きく出来るイメージ
操作は簡単、感覚で選べる
コーラスとは違った、ふんわり感
音質
操作スピード
マニアック度
痒いところに手が届く
ツイーターに入れる、ボーカルや、メロディー楽器以外
ボーカルや、メロディー楽器以外でツイーターに入れても良いと考えるパーツがあります。
ヴァイオリンなどの高音が痛いと感じない音、1つの素材をマルチマイク収録していてリボンマイクで録音されたトラック、実音ではないアンビエントマイクの音、ディレイやリバーブなどの実音から遅れて出てくる音
これらのパーツはツイーターに入れても良い音として音楽の深みを出す為に積極的に利用していきます。
録音現場に行けない場合は、たくさんの素材にバラバラのエフェクターをどんどんさしてみてお気に入りの組合せを探すのも面白いと思います。
まとめ
イコライザーは使用すると必ず、音源を破壊してしまう機械です。
その犠牲を払って使用する意味があるか、Mix師は考えます。
なのでイコライザーは主役ではない楽器に対して使用するのが、僕のミックスの考え方です。
特にボーカルは、音を変化させていくパーツが少ないのでMix師側で色々な工夫が必要になってくると思います。
今回は、スピーカーのツイーターはボーカルの物という考え方について解説しました。
次回は、時間軸の変化を味方につけるについて解説したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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