今回は定番のボーカルマイクNEUMANN U87&U87Aiについて解説していきたいと思います。
マイクの定番中の定番
NEUMANN / U87Ai
レコーディングスタジオには基本的に置いてあるマイク
迷ったらこのマイクを使ってみる
オールマイティに使用可能
音質
操作スピード
マニアック度
クール
U87Aiは現在も現行生産されているマイクで、レコーディングエンジニアが録音の基準として最も多く使用されているマイクだと思います。
素材を録音する時大切な事は、まず自分の耳でその音を聞くことが重要です。
当たり前のことを言っているように思うと思いますが、DAWを使用して録音作業を始めるとスピーカーやイヤフォンから出てくる音にだけ集中してしまうことが多いです。
いつものプリセット、いつもの機材、いつものプラグイン、料理に例えるならば素材の味を確認する前に先に調味料を鍋の中に入れるような行為です。
特にボーカルは、その日の体調や日々の成長とともに声が変化していきます。
その小さな違いを確認する意味でも、一定の基準が必要になってくると思います。
Mix師がMixの前に行う大切な行動で解説しましたが、Mix師は自分の体調やスタジオ機器の故障などを早期発見する為に仕事場についたときに必ず行うことがあります。
基準となるマイクも、リファレンス音源と同じく録音対象の状態を把握するのに大変役に立ちます。
そんなレコーディング業界の中心のようなマイクについて解説したいと思います。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
NEUMANN U87Aiとはどのようなマイク?
Neumannは高品質マイクロホンメーカーとしてたくさんの方に支持をされ、レコーディングで必ずといっていいほど使用されているマイクの製造会社になります。
歴史は大変古く、数々の演説やライブなどの名シーンでNeumannのマイクは使用されてきました。
相手に何かを伝える時の説得力を増幅する機器として、現在も成長を続けています。
U87シリーズの現行品がU87Aiとなっていて、内部の仕組みは何度かモデルチェンジをしているので、それぞれ音が違います。
ビンテージ楽器にもいえることですが、保存状態やメンテナンスをしっかりしておけば、マイクも歳を重ねるごとに、成長をしていく機材です。
僕が良く使用するU87Aiは製造されてから20年くらいたっている物ですが、新品の物とはやはり音が違います。(オーバーホールと呼ばれるメンテナンスを何度かおこなっています。)
歌に使用するときに思うこととしては、少しエッジが柔らかくなったような印象があります。
ビンテージのU87になってくるとさらに長時間熟成で、中古市場で大変高価な金額で取引されています。
ビンテージの状態になったU87の音は、よく使用するので知っていますがが発売当時の音を僕は聴いたことがありません。
現在のU87はU87Aiよりもさらに柔らかく伸びやかなイメージです。
U87の新品はどんな音だったのでしょうか。
タイムマシンがなければ確認することはできませんが、気になりますね!
U87Aiも少しづつ変化をしていき、ビンテージと呼ばれる機材になっていくのだと思います。
U87Aiの立ち位置を他の製品で例えるなら
U87シリーズは、レコーディング現場ではよく車の「カローラ」に例えられることが多いです。
現在では車文化にあまり馴染みがない方が多いと思いますので、iPhoneシリーズで例えてみようと思います。
- iPhone 12 Pro Max
- iPhone 12 Pro
- iPhone 12→(U87シリーズ)
- iPhone 12 mini
- iPhone SE
軽自動車でもなく、高級車でもない平均点をとっているマイク。
iPhoneシリーズでいえば、iPhone 12かと思います。
高級という物でもなく、安価な物でもない。
そんな位置づけのマイクです。
無指向・カーディオイド・双指向切替式の切り替えとマイクのローカットが可能
マイクは録音する際に、音が入りやすい向きが決まっています。
皆さんがよくカラオケなどで使用されるマイクの場合。
マイクの丸い部分の天辺を口にまっすぐ向け、ボールの部分を手で覆わない状態だとカタログにあるようなスペックで録音が可能になります。
角度やマイクとの距離を変えれば、録音される音像は変化します。
U87Aiは録音する指向性を3タイプ切り替えて使用することが可能です。
Omni(無指向性、全指向性)
マイクの周りを満遍なく録音できるモードです。
大勢が1つのマイクに向かってコーラスなどをする時に使用します。
その場の空気感を録音したいときなどにも便利です。
Cardioid(単一指向性)
ソロパートの録音では通常このモードを使用します。
正面からの音を主に録音します。
ボーカルもこのモードで録音が普通です。
Figure 8(双指向性)
ダイヤフラムの前と後ろの音を録音しやすいモードです。
1対1の対面インタビューなどで、よく使用します。
ローカット機能
ローカットスイッチをONにすると、低音をマイクでカットすることが可能です。
ボーカル録音ではローカットのカーブが急な為僕は使用しませんが、録音したい素材に必要がない低音が含まれている場合は使用すると良いと思います。
Mix師が使用するイコライザーから空間の音を考えるでも解説しましたが、イコライザーは使用すると必ず素材の状態を破壊してしまう機材です。
可能な限り、マイクや音が出る素材の方で音質を調整していきましょう。
Pad機能
その他には、マイクからの信号を下げるPadという機能がついています。
使用しているヘッドアンプでレベルを受けきれない(歪んでしまう)場合などに使用します。
オススメのHAの組み合わせは、MANLEY / VOXBOXです。
U87シリーズは真空管タイプのHAと相性が良いと思っています!
専用のマイクホルダーが必要
U87Aiは専用のショックマウントタイプのホルダーに設置して使用します。
ゴムの紐がマイクへの振動を抑えてくれる仕組みです。
スタジオではこのホルダーが用意されていることが多いですが、僕は別会社のマイクホルダーを使用しています。
U87Aiのスペックをアップグレードする小物達
スペックの中間で存在するマイクですが、色々な工夫でより高品質な録音を可能にすることができます。
基本のスペックが安定しているからこそですね!
いくつかの商品をご紹介します。
Enhanced Audio / M600
ユニバーサルマイクロフォンホルダー
Enhanced Audio / M600
一般的なマイクロホン-直径65mmまでのマイクをマウント可能
マイクのグレードアップ
ネジを回して簡単設置
音質
操作スピード
マニアック度
クール
マイクを支えるユニバーサル・マイクロフォン・マウントです。(直径65mmまでのマイクで使用可能)
マイクホルダーなのにこの値段するのかとビックリされるかと思いますが、価値は3倍くらいあります。
iPhone 12 → iPhone 12 Pro
くらいの衝撃がありました。
U87Aiのエッジの部分が優しくなり、伸びやかになるイメージです。
どの機材にもいえることですが、録音の際に振動を処理することはとても重要なことです。
重い機材やスピーカーを浮かす機材が数多く販売されていることには理由があります。
ネジで圧力をかけて抑える為、スタジオでレンタルしたマイクにこのホルダーを使用する際には十分注意が必要です。
ネジを絞めすぎるとマイクがへこみます!
TRIAD ORBIT / T2, Standard Tripod
しっかりと固定できるマイクスタンド
TRIAD ORBIT / T2, Standard Tripod
色々なパーツを購入して、複雑なスタンドも制作可能
譜面台やドリンクホルダーも設置可能
足の角度も調整可能
音質
操作スピード
マニアック度
クール
マイクへの振動を抑えるには、マイクスタンドも重要になってきます。
僕はこちらのメーカーを最近使用しています。
色々なアタッチメントが販売されていて、宅録環境でマイクを設置する際、省スペース化の強い味方になってくれると思います。
STEDMAN / PROSCREEN PS101 METAL POP FILTER
メタルタイプのポップガード
STEDMAN / PROSCREEN PS101 METAL POP FILTER
ネジ式でマイクスタンドに簡単設置
アームの可動域が広く宅録に最適
ポップガード用のスタンドいらず
音質
操作スピード
マニアック度
クール
U87Aiにはポップガード(息のノイズを除去するフィルター)がついていない為、ボーカル録音に使用する場合ポップガードを購入する必要があります。
音の好みによりますが、僕は鉄のタイプをよく使用しています。
マイクとポップガードの距離は9cmくらい離して設置してください。
これを設置することによって、「フカレ」という息のノイズを軽減できます。
まとめ
今回は初めて録音する歌い手さんにNEUMANN U87を使用する理由について解説させていただきました。
色々あるマイクの中では、基準の立ち位置になっているので、初めて録音する素材に対して設置されることが多いと思います。
収録される音の特性が人間が聞こえる範囲を十分とらえていることもあり、U87を設置したことによる録音の失敗は少ないと思います。
ボーカル用のマイク購入の相談をする際などでも
U87Aiで録音すると〇〇に思っているのですが、僕にあるマイクはどれが良いと思いますか?
こんな質問の仕方だと、より的確に店員さんも質問に答えられると思います。
宅録で使用する、自分専用ボーカルマイク購入の前に是非スタジオなどでレンタルして使用してみることをオススメします。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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