今回は、2026年に選ぶサミングミキサーについて書きたいと思います。
以前このブログでは「オススメ宅録Summing mixer(サミングミキサー)3選」という記事を書きました。当時取り上げたのは、SSL XLogic X-Desk、SPL MixDream XP、SSL Sigmaの3機種です。
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あれから、サミングミキサーに求める機能も変わってきました。
単純にDAWから複数の音を出してアナログで足し合わせるだけではなく、オートメーション、トータルリコール、外部機器との連携、オーディオインターフェース機能まで含めて考える必要があります。
今回候補にしたのは、次の3機種です。
- WesAudio / ngSumBox
- API / ASM164
- Solid State Logic / BiG SiX
3台とも方向性がかなり違います。
ngSumBoxは、アナログサミングとDAWのオートメーションを組み合わせた現代型。ASM164は、APIコンソールのサミングと2系統のミックスバスをラックサイズにまとめた王道型。BiG SiXは、SSLのサミング、バスコンプ、録音、モニター、USBオーディオインターフェースを一台にまとめた小型コンソール型です。
先にお断りしておくと、3台を同じ環境で並べて聴き比べたわけではありません。ASM164とBiG SiXは実際のミックスで使ったことがあって、どちらも良かったです。ngSumBoxはまだ触れていません。
ですのでこの記事は、音質のランキングではなく、仕様と設計思想を並べて「宅録やプライベートスタジオで実際に使いやすいのはどれか」を考える内容になります。

サミングミキサーって、結局は音を良くするための機材ですよね?

それだけではないんです。
音質はもちろん大事ですが、仕事で使うとなると「数週間後に同じミックスを開き直せるか」が同じくらい効いてきます。今回はそこを軸に見ていきます。
サミングミキサーで重要なのは音質だけではない
サミングミキサーを導入する目的は、DAWで作った複数のステムをアナログ領域で混ぜることです。
ドラム、ベース、ギター、キーボード、ボーカルなどをオーディオインターフェースから個別に出力し、サミングミキサーでステレオにまとめ、再びDAWへ録音します。
この方法には、いくつか注意点があります。
- 使用するチャンネル数に応じたD/A出力が必要
- 2Mixを戻すためのA/D入力が必要
- アナログ機器の設定を曲ごとに記録する必要がある
- ミックス修正時に同じ状態を再現できる必要がある
- DAW側とサミングミキサー側のどちらでレベルを操作するか決める必要がある

特に問題になるのがリコールです。
音が良くても、数週間後に同じミックスを開き直せなければ、仕事では使いにくくなります。
物理フェーダーが付いたサミングミキサーは、録音時に複数のマイクやシンセをアナログで混ぜる場合には便利です。しかしDAW中心のミックスでは、DAWとアナログミキサーの両方にフェーダーが存在することになり、管理する場所が増えてしまいます。
今回の3台は、この問題に対する考え方がそれぞれ異なります。
サミングミキサーの効き方は、ボディブローに近い

もうひとつ、サミングミキサーについて僕が思っていることを書いておきます。
サミングミキサーを通したときの変化は、「音質が良くなる」というより、ケーブルを変えたときのような微妙な違いに近いです。一発で分かるような派手な変化ではありません。
ただ、その微妙な違いがボディブローのように効いてきます。
理由は、ミキサーが挟まったままミックスを進めるからです。返ってくる音を聴きながら判断していくので、結局は自分の好きな方向へミックスしていくことになります。
そしてミックスが終わったときに、過去の自分と少し違うな、という違いが出てくる。サミングミキサーの効果は、そういう出方をするものだと思っています。
だからこそ、単体で並べて聴き比べて「こっちの方が良い音」と決めるのが難しい機材でもあります。

じゃあ、どれを選んでも同じってことですか?

そこは違います。抜けの悪い機材で、抜けの良い音楽は作れませんから。
派手な差は出なくても、その音を通しながら何時間もミックスを積み上げるわけなので、より良いものを選んでおく意味はあります。
WesAudio / ngSumBox
アナログサミングをDAWの一部として扱える
ngSumBoxは、18×2のアナログサミングシステムです。16チャンネルのサミング入力に加え、エフェクトリターンやサブミックスなどに使用できる2チャンネルの外部入力を装備しています。
僕がこの製品で最も注目しているのは、アナログ回路の音質そのものより、16チャンネルのアナログレベルをDAWからオートメーションでき、セッションと一緒にリコールできることです。
一般的なサミングミキサーでは、DAW側でステムの音量を調整し、サミング側はユニティゲインで使用することが多いと思います。ngSumBoxでは、サミングミキサー内部のアナログレベルをプラグインから操作できます。
- 16チャンネルのレベルコントロールとオートメーション
- DAWセッションと連動したトータルリコール
- チャンネルごとの可変THD
- LCRルーティング
- 16系統のダイレクトアウト(プリ/ポスト切替可)
- WIDTHコントロール
- 2系統のミックスバスインサート(順序変更可・フルリコール対応)
- 電子バランス出力とトランス出力の選択
- MC/HUIコントローラーへの対応
大型アナログコンソールで行っていた、フェーダー操作、パンニング、サミング、ミックスバス処理を、1UサイズとDAW連携で再構築したような製品です。
SSL 9000Jそのものの音を再現する製品ではありません。しかし、アナログ領域でミックスバランスを作り、その動きをオートメーションし、後日同じ状態へ戻せるという考え方は、大型コンソールを使ったミックスに近いと思います。
アナログ領域でオートメーションをかける、という意味
そもそも、なぜサミングミキサーを入れたいのか。アナログ領域で混ぜたいからです。デジタルの加算とは違う何かが欲しい。出発点はそこだと思います。
ところが多くのサミングミキサーは、「混ぜる」ところで止まっています。レベルはDAW側で作って、サミング側はユニティゲインで通すだけ。アナログで混ぜてはいるけれど、アナログでミックスはしていない。
ngSumBoxが違うのはここです。16チャンネルのアナログレベルそのものを、DAWからオートメーションできる。アナログ回路の中でフェーダーが動きます。
これは、大型コンソールがやってきたことと同じです。
そして——大型コンソールが今もスタジオに君臨し続けている理由の大きな部分が、ここにあると思っています。オートメーションができるからこそ、卓は現場に残りました。

逆に、オートメーションを持たない卓はどうなったか。ほとんどがチャンネルストリップにばらされて、プロジェクトスタジオへ散っていきました。卓としては生き残れなかったわけです。
サミングミキサーも、同じ構図だと思っています。混ぜるだけの箱と、アナログでミックスができる箱は、同じカテゴリーの製品に見えて意味がまったく違います。

同じ「サミングミキサー」でも、そこまで違うんですね。

違います。ここが今回いちばん言いたかったところかもしれません。
だから音の好みが分かれても、僕はngSumBoxを第一候補に挙げています。
ngSumBoxの良いところ
- 物理フェーダーを並べずにアナログレベルを操作できる
- ミックス修正時のリコールが速い
- オートメーションをDAW上で編集できる
- チャンネルごとに倍音量を調整できる
- クリーンとトランスの出力段を選択できる
- 1Uなのでラックスペースを圧迫しにくい
ngSumBoxの気になるところ
ngSumBoxのオーディオ経路はフルアナログで、AD/DAコンバーターは内蔵していません。USBとEthernetはリコールと制御のためのもので、音は通りません。
16チャンネルで使用するには、DAWから16系統を出力するためのD/Aと、完成したステレオミックスを戻すためのA/Dが必要です。本体だけを購入してもシステムは完成しません。
入出力はDB-25が4基(入力用2基・ダイレクトアウト用2基)、メインステレオ出力がXLR、外部入力とインサート、モニターアウトがTRSです。DB-25ケーブルが最低でも2本、ダイレクトアウトも使うなら4本必要になります。
オーディオインターフェースの出力数、コンバーター、ケーブル、ラック配線まで含めて予算を考える必要があります。
ngSumBoxはこんな方にオススメ
- アナログサミングでもトータルリコールを重視したい
- クライアントからのミックス修正が多い
- Pro ToolsなどのDAWオートメーションに慣れている
- すでに多チャンネルの高品質なAD/DAを所有している
- 大型コンソールを置かずにハイブリッドミックス環境を作りたい
価格は$2,999、国内価格は¥544,500(税込・本体¥495,000)です。NAMM 2026で発表され、2026年3月末から出荷が始まりました。国内でもすでに取り扱いがあります。国内代理店はアンブレラカンパニーで、販売店の在庫表示は「お取り寄せ」なので、納期は問い合わせが必要です。サイズは1U(44×483×267mm)です。
公式サイト
API / ASM164
API THE BOXのサミングをラックサイズに
ASM164は、16チャンネルのアナログサミングミキサーです。API公式のプレスリリースは2024年秋で、製品ページやメディアの記事が出そろったのは2025年1月、NAMM 2025の時期でした。
API THE BOXコンソールのサミングセクションをベースにしており、入力段にはAPI 2510オペアンプ、出力段にはAPI 2520オペアンプとトランスを採用しています。
各チャンネルには、パン、31ステップのレベルコントロール、インサート、Mix-A/Mix-Bへのアサインがあります。
- 16チャンネルのアナログ入力
- Mix-A/Mix-Bの2系統のステレオバス
- 各チャンネルにインサート
- 連続可変パン(センタークリック付き)
- 31ステップのレベルコントロール
- API 2510入力オペアンプ
- API 2520出力オペアンプ
- トランスバランス出力
- 外部ステレオ入力
A/Bバスは何に使うのか
ASM164のMix-AとMix-Bは、試聴用のA/B切り替えではありません。独立した2系統のステレオミックスバスです。
各チャンネルをMix-Aだけ、Mix-Bだけ、または両方へ送れます。
Mix-Aをドラムのアナログサブグループとして使う方法が、いちばん面白いと思います。
キック、スネア、タム、オーバーヘッドなどをMix-Aへ送り、Mix-AのインサートにAPI 2500などのステレオコンプレッサーを接続します。
コンプレッサーから戻ったドラムミックスを「A TO B」でMix-Bへ送り、ベース、ギター、ボーカルなどと合流させます。
DAW内で一度ステレオにまとめてからコンプレッサーへ送るのではなく、ドラムの各ステムをアナログでサミングした後にステレオコンプレッサーへ入れられる点に意味があります。
Mix-AとMix-Bはそれぞれ独立したXLR出力を持っているので、A TO Bを使わず、2系統を別々にDAWへ録音することもできます。
信号の順番を確認しておきます。マニュアルによると、Mix-Aのインサートは「バス加算後・レベルコントロール前」。そしてA TO Bは「Mix-Aの出力をMix-Bの入力へ送る」と書かれています。
つまり 各ch → Mix-Aバス加算 → インサート → レベルコントロール → 出力 という並びで、インサートは出力より確実に上流です。Mix-Aのインサートに入れたコンプを通った音が、そのままMix-Bへ合流します。上の使い方は成立します。


サミングした後にコンプ、っていうのがミソなんですね。

そうです。DAWの中でステレオにまとめてしまうと、そこはもうデジタルの足し算なんですよね。
アナログで足してからアナログのコンプに入る、という順番が作れるのがASM164の面白いところだと思います。
潰した音と素の音を、箱の中で混ぜる
ここからがA TO Bの本番です。各チャンネルはMix-AとMix-Bの両方へ同時にアサインできます。これを使うと、パラレルコンプレッションがASM164の中で完結します。
- ドラムの各chをMix-AとMix-Bの両方へ送る
- Mix-AのインサートにAPI 2500などを入れて、強く潰す
- A TO BでMix-AをMix-Bへ合流させる
- Mix-Bの中で、潰した音と素の音がアナログのまま混ざる
そして効いてくるのが、Mix-Aのレベルコントロールが、そのままブレンド量のノブになることです。31ステップのディテント付きなので、混ぜ具合を数字で控えて戻せます。
アナログでパラレルコンプをやると、普通はここがリコールの弱点になります。ASM164では逆に強みになる。
DAW内のパラレルコンプと違うのは、潰す側が本物の2500で、しかもcleanとcrushedの足し算がアナログで行われることです。DAWだと最後の加算はどうしてもデジタルの足し算になります。
なお、A TO Bを使わずにMix-AとMix-Bを別々に録音して、DAW上でブレンドする手もあります。こちらは後から混ぜ具合を変えられる代わりに、最後の加算がデジタルになります。どちらを取るかは好みだと思います。

0dBバイパス ── レベルノブを信号経路から外せる
ASM164には、チャンネルのレベルコントロールを信号経路から丸ごと外す0dBバイパスがあります。
BiG SiXの物理フェーダーは外せません。曲ごとに手で戻す必要があります。ASM164は「レベルはDAWに任せて、この箱は足し算だけやる」という使い方ができます。
これがリコールの話に効きます。バイパスしてしまえば、ASM164側に控えておく設定がゼロになります。全部DAWが持つ。アナログサミングでいちばん面倒なところが消えます。
ひとつ注意点があります。マニュアルの表記は「Global」0dB Channel Level Control Bypassで、16チャンネルまとめて切り替わります。ch個別にはできません。「1〜8はユニティ、9〜16はアナログで触る」という混在はできない、ということです。
実用上は、2つのモードの切り替えと考えたほうが素直だと思います。
- バイパスON:DAWが全部のレベルを持つ。ASM164側は何も控えなくていい
- バイパスOFF:31ステップのノブで触る。ただし全chにアッテネーターが入る
困るのは「1chだけアナログで絞りたい」という場面ですが、そういうときは音源側かD/A側で合わせるほうが筋なので、実際に困ることは少ないと思います。
なお、外れるのは入力チャンネルのレベルコントロールです。Mix-A/Mix-Bのバスレベルは別扱いなので、上のパラレルコンプのブレンド量はバイパスONのままでも触れる読みになります(マニュアルに明記はないので断定は避けます)。
ASM164の良いところ
- APIコンソールの回路をラックサイズで導入できる
- 2系統のミックスバスをサブグループやパラレル処理に使える
- 各チャンネルに外部機器をインサートできる
- 0dBバイパスで全チャンネルのレベルノブをまとめて信号経路から外せる
- Mix-B出力を2台目の外部入力へ回すことで32チャンネルへ拡張できる
実際に使ってみて良かったのは、管理のしやすさ
ASM164は実際のミックスで使いました。使ってみていちばん良かったのは、音そのものよりも管理のしやすさでした。
以前使っていたX-Deskのような卓型と比べると省スペースですし、大きいフェーダーが付いていません。そのぶん、曲ごとに戻す場所が少なくて済みます。
サミングミキサーを机の上に置くのか、ラックに入れてしまうのか。これは音の話ではありませんが、実際に毎日使うとなると効いてくる差だと思います。
ASM164の気になるところ
31ステップのレベルノブはリコールしやすい設計ですが、ngSumBoxのような自動リコールではありません。
DAW側にもレベルコントロールがあるため、ASM164側のノブを積極的に使うと管理する場所が増えます。ここは前述の0dBバイパスで回避できますが、その場合はチャンネルのアナログトリムを一切使わないという割り切りになります。
またAD/DAコンバーターは内蔵されていないため、16チャンネルのD/A出力とステレオA/D入力が別途必要です。
複数台を接続して32チャンネル以上へ増やせますが、宅録ではそこまで使用する機会は少ないと思います。それよりも2系統のミックスバスを利用したドラム処理やパラレル処理の方が実用的です。
サイズは2Uです。ngSumBoxが1Uなので、ラックの残りスペースを計算するときはここも見ておきたいところです。
価格は$3,695、国内は¥671,000(税込)前後で流通しています。発表時は$3,195でしたが、現在は改定されています。
ASM164はこんな方にオススメ
- APIのコンソールサウンドが好き
- ステムごとにアナログ機器をインサートしたい
- ドラムなどをアナログでまとめてからコンプレッションしたい
- Mix-A/Mix-Bを使って複数の処理を同時に録音したい
- オートメーションよりシンプルなアナログ操作を重視する
公式サイト
Solid State Logic / BiG SiX
サミング専用機ではなく小型SSLコンソール
BiG SiXは、18入力のアナログサミング、G Series系バスコンプレッサー、チャンネルEQ、モニターコントローラー、16入力/16出力のUSBオーディオインターフェースを一台にまとめた製品です。
「18入力」の内訳は、モノ4チャンネル+ステレオ4チャンネル(8ch)+ステレオ外部入力2系統(4ch)+リアのステレオ・ミックスバス・サミング入力(2ch)で18です。USBが16chなので、数が合わないと感じたらここを見てください。
今回の3台では唯一のサミング専用機ではありません。また2021年12月に発表された製品なので、新製品という括りには入りません。
それでも候補に入れた理由は、SSLの音が好きだからです。
僕が最初に使用したサミングミキサーはSSL XLogic X-Deskでした。SSLの粘りがありながら音が崩れにくい感覚は、現在でも魅力があると思っています。
BiG SiXも実際のミックスで使いました。使ってみて良かったのは、録音のときにミニミキサーとして色々な場面で使えるところです。X-Deskの進化版、という感じでした。
一方で、BiG SiXはサイズが大きく、物理フェーダーが並んでいます。
録音時には便利ですが、DAW中心のミックスでは曲ごとのフェーダー位置を手動で戻す必要があります。サミング専用機として考えると、この部分は少し使いにくいと思います。
16×16 USBインターフェースでI/Oを別途用意しなくてよい
BiG SiXには24bit/96kHz対応の16入力/16出力USBオーディオインターフェースが内蔵されています。Macはクラスコンプライアントでドライバー不要ですが、WindowsはSSLのASIO/WDMドライバーが必要です。
DAWからUSBで16チャンネルを送り、内部でD/A変換してSuperAnalogue回路でミックスし、完成したMain Mixを内部のA/DでUSBセンド15/16からDAWへ録音できます。
この使い方なら、サミング用の16チャンネルD/Aと、ステレオA/Dを別途購入する必要がありません。
ただし、一般的な16×16コンバーターと同じように全チャンネルを自由にルーティングできるわけではありません。USBの中身は卓の内部構成に合わせて割り当てられています。
| USB | 内容 |
|---|---|
| センド 1〜12(本体→DAW) | チャンネルストリップ(モノ4+ステレオ4)。デフォルトはプリフェーダー、POST切替可 |
| センド 9〜12 | スイッチでステレオCue 1/Cue 2に差し替え可 |
| センド 13/14 | Bus B の出力 |
| センド 15/16 | メインバス出力(メインフェーダー後) |
| リターン 1〜12(DAW→本体) | 各チャンネルのDAWリターン。チャンネル上部のUSBスイッチで、アナログ入力の代わりに選ぶ(モノchはプリアンプ後のユニティゲイン、ステレオchはTRIM前) |
| リターン 13〜16 | 外部入力1/2(TRS外部入力をオーバーライド) |
つまり、本体からDAWへ返る13〜16がBus Bとメインバス、DAWから本体へ入る13〜16が外部入力という構成です。汎用インターフェースというより、BiG SiXの内部構成に最適化されたUSB I/Oと考えた方がよいと思います。

16in/16outって書いてあるから、どこにでも自由に挿せるのかと思ってました。

そこは注意点ですね。
1〜12は普通にチャンネルとして使えますが、13〜16は卓の中の決まった場所につながっています。
Pro Tools HDXのような既存システムへ「16ch分のI/Oを足す」という用途で考えていると、思っていたのと違うことになります。
ドラムの音作りを素早く行える

BiG SiXは、完成したステムを足すだけでなく、ドラムの音作りに使うと魅力が分かりやすい製品です。
- キック、スネア、タムをモノチャンネルへ入力
- オーバーヘッドやRoomをステレオチャンネルへ入力
- モノ4chはEQとコンプ、ステレオchはEQで輪郭を調整
- Bus BやCueを使ってパラレル処理
- Listen Mic CompressorでRoomを強く潰す
- 最後にG Series系バスコンプでまとめる
- 処理後のドラムをUSBでDAWへ録音
アナログレベルで複数の音を混ぜながら録音する場合、物理フェーダーは便利です。複数のシンセやリズムマシンを同時に扱う環境でも活躍すると思います。
しかし、マイクや楽器を1〜2チャンネルずつ録音する一般的な宅録では、録音用ミキサーとしての機能を持て余す可能性があります。マイクプリは4基なので、ドラムのマルチマイク録音には足りません。
BiG SiXの良いところ
- SSL SuperAnalogue回路で最大18入力をサミングできる
- G Series系バスコンプレッサーを搭載
- 全8チャンネルに3バンドEQ、モノ4チャンネルにはコンプレッサーも使える
- Listen Mic Compressorをドラムの潰しに使える
- USB I/Oを内蔵し、別途多チャンネルAD/DAを用意しなくてよい
- モニターとヘッドフォン管理まで一台で完結する
- 録音時に複数音源をアナログで素早くまとめられる
BiG SiXの気になるところ
- サミング専用機としては本体が大きい
- 物理フェーダーのトータルリコールに対応しない
- DAWと卓の両方でレベルを管理する必要がある
- USB I/Oのルーティングは卓の内部構成に依存する
- 多数のマイクを同時録音するには4基のマイクプリでは足りない
- Pro Tools HDXなど既存のシステムへUSB I/Oを単純追加できるとは限らない
価格は$3,299.99、国内は¥473,000(税込)前後です。
BiG SiXはこんな方にオススメ
- SSLのサウンドとバスコンプが好き
- サミングだけでなく録音にも使用したい
- ドラムや複数のシンセをアナログ領域で素早くまとめたい
- オーディオインターフェースとモニター機能も一台に集約したい
- 物理フェーダーの操作と手動リコールを負担に感じない
公式サイト
3機種を比較

| 製品 | ngSumBox | ASM164 | BiG SiX |
|---|---|---|---|
| 方向性 | DAW連携型 | APIコンソール型 | 小型SSL卓型 |
| サミング入力 | 18×2 | 16ch+外部ステレオ | 最大18入力 |
| 自動リコール | 対応 | 非対応 | 非対応 |
| DAWオートメーション | 対応 | 非対応 | 非対応 |
| AD/DA | 非搭載 | 非搭載 | USB 16×16内蔵 |
| 物理フェーダー | なし | レベルノブ | 100mmフェーダー×9 |
| サイズ | 1U | 2U | 卓型 |
| 価格 | $2,999 ¥544,500 | $3,695 ¥671,000 | $3,299.99 ¥473,000 |
| 主な魅力 | リコールと操作性 | API回路と2バス | SSLバスコンプと録音機能 |
| 主な弱点 | 外部AD/DAが必要 | 手動リコール | 大きさと手動リコール |
この3台、価格が意外と近いんです。国内価格でも¥473,000から¥671,000の間に3台とも収まっています。同じくらいの予算で、まったく違う三つの考え方から選べる、という状況です。
ひとつ面白いのは、米ドルとの並び順が入れ替わることです。米国価格ではngSumBoxが一番安いのですが、国内価格ではBiG SiXが一番安くなります。輸入の代理店価格と国内正規価格は別物なので、海外サイトの価格だけを見て判断しない方がよさそうです。
どのサミングミキサーを選ぶか
僕が現在導入を検討するなら、第一候補はWesAudio ngSumBoxです。
理由は、16チャンネルのアナログレベルをオートメーションでき、ミックスの状態をDAWセッションと一緒にリコールできるからです。
アナログサミングの音質差は重要ですが、仕事で使う場合には、修正依頼へすぐ対応できることも同じくらい重要です。すでに多チャンネルのAD/DAを所有している環境では、ngSumBoxの完成度はかなり高いと思います。
API ASM164は、APIの音が好きで、ドラムなどをアナログでまとめた後にステレオコンプレッサーへ入れたい方に向いています。Mix-A/Mix-Bの使い方を決めてから導入すると、単純なサミング以上の価値が出てきます。
SSL BiG SiXは、サミング専用機として見るとサイズとリコールが気になります。
一方で、USBオーディオインターフェース、SSLのチャンネル処理、Listen Mic Compressor、G Series系バスコンプレッサーまで含めると、ドラムや複数のシンセを素早く作り込める小型コンソールとして魅力があります。
宅録ではすべての機能を使い切れない可能性がありますが、SSLの音とバスコンプが好きな方には分かりやすい選択肢だと思います。
なぜこの軸にこだわるのか
少し個人的な話をさせてください。
僕はSSL 9000Jとハーフインチのテープで作られた音楽を、本当に愛しています。
あの時代のミックスは、アナログの卓でフェーダーを動かして、その音をアナログのテープに落としていました。オートメーションもアナログ領域で走っていたわけです。
いまPro Toolsは、僕の耳にはSONY 3348にまだ勝てていません。
スペックの表を並べれば、3348のほうが劣って見えるかもしれません。サンプリングレートもビット数も、いまの環境のほうが上です。
でも僕は、あれはまったく違う機械だと思っています。数字で比べる土俵に乗っていない。
優れている部分として大きいのは、磁気テープの揺らぎだと感じています。デジタル記録であっても、走っているのはテープです。そこで生まれるわずかな揺らぎが、音楽の表情になって出てくる。これは僕個人の感覚で、数値で示せる話ではありません。

でも、3348のような録音機がもう少し出てきてくれれば——また音楽に匂いが感じられる時代が来るかもしれない。そう思っています。
アナログ領域でオートメーションをかけられるサミングミキサーに惹かれるのは、たぶんそこに繋がっています。混ぜるだけでは足りない。アナログの中でミックスしたい。
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まとめ
今回の3台は、同じサミングミキサーでも考え方が異なります。
- リコールとDAW連携を最優先するならWesAudio ngSumBox
- APIの回路と2バスを利用したアナログ処理ならAPI ASM164
- SSLのバスコンプと録音機能まで一台にまとめるならSSL BiG SiX
サミングミキサーは、音質だけで選ぶ機材ではありません。
必要なAD/DAのチャンネル数、配線、リコール方法、外部機器との接続、録音でも使用するかを含めて考える必要があります。
物理フェーダーは録音では便利ですが、DAW中心のミックスでは管理する場所を増やします。
そして音については、劇的に変わるものを期待するより、抜けの良い機材を選んでおくこと。派手な差が出なくても、その音を通しながらミックスを積み上げていくので、そこはボディブローのように効いてきます。
そのため現在の宅録環境では、大型コンソールをそのまま小さくするより、アナログ回路とDAWをどのように連携させるかが重要になってきていると思います。
サミングミキサーを導入するときは、「どんな音が欲しいか」だけではなく、「数週間後に同じミックスをどうやって開き直すか」まで考えて選ぶことをオススメします。

ASM164とBiG SiXは実際のミックスで使いましたが、どちらも良かったです。
ngSumBoxはまだ触れていないので、機会があれば使ってみたいですね。
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