音楽は目に見えないものの為、「空は青い」などと言う万人にわかりやすく共感できる基準がありません。音楽理論を使うことである程度は方向性を示すことができますが、作曲をしている方達でなければ、この方法も利用することが難しいです。歌い手さんからすると、自分が思い描いている完成図とはちょっと違うけど何が違うのか伝えることができない。Mix師からすると、今が音響的にはベストなバランスなのになぜ崩そうとしているのか、意図がわからない。Mixの工程においてちょっとした工夫から、スムーズにMixを進める方法を解説していこうと思います。
Mix師に対してDAWの数値でオーダーをしない
歌い手さんのイメージと違う部分があった時に、直接的な数値を使ってオーダーをするとMixの方向性を誤解される可能性がとても高いです。Mixのやり方は100人いたら100通りあります。あなたが感じた数値は、あなたが1から自分でMixをしたときの数値であってMix師が作ってきた現在のDAWの数値とはかけ離れています。安易に数値で示してしまうと、3dBあげてほしいと言われたから3dBあげました。と言うような返答が返ってきて、またイメージと違うという無限ループの繰り返しになってしまいます。
そこで、音源の中のパーツAに比べてパーツBをこのように感じているのでパーツBをこのように聞こえたい。というように比較対象をもちいた感情の説明を、修正したい内容に入れていく必要があると思います。バスドラムに対してスネアが大きく感じる、ヴォーカルの高音よりもギターの高音の方が大きく感じるなど。具体的な数値はMix師に任せて、自分が感じた感情を伝える方が格段にやりとりが早く進むと思います。Mix師の方から具体的な数値を聞かれた場合だけ、数値は答えるようにしましょう。
修正のオーダーは、歌詞全体を使用する
1番と3番が同じ歌詞になっている曲はよくあります。オーダーの際に部分的に切り取った歌詞を貼り付けた場合、その箇所がどの部分の話なのかがわからない状態になります。自分は1番のつもりだったけど、Mix師は3番を修正してしまった。良く起こる間違いです。歌詞全体を使用して指示を出せば、修正箇所の間違いはなくなります。他には歌詞の一部分だけヴォーカルを大きくしたい。息を吸い込む音を小さくしたいなども歌詞に記載してオーダーすると良いと思います。イントロや間奏部分の修正をお願いしたい時も、歌詞の行間を開けて伝えることができます。また特殊なエフェクター処理をしたい部分などが、Mixをお願いする前からわかっていれば先に記載しておくと良いと思います。小節の知識がある方であれば1曲を通した構成譜面を作ったり、DAWのマーカーを利用したりすると、より正確なオーダーが可能になると思います。
Mixの修正はMixを完成させるつもりで、修正内容を一回で全て伝える。
Mixは全体のバランスを考えながら行う必要があります。オーダーが数回に分かれて小出しになると、塩と砂糖を繰り返し調整した料理のようなMixになってしまいます。歌い手さんからの修正のオーダーがあった時Mix師は、その変化に対して少なくとも3つ以上他のパーツの修正を行なっていることがほとんどです。修正のたびに完成図を思い出しながらオーダーをしていきましょう。
好きなヴォーカルの質感や響き、カラオケ音源に対するヴォーカルの大きさなどを考慮して選択した音源を事前に用意しておく
人によってヴォーカルに対する響きの量などは好みがあります。ドライな音像を好む方。ウェットな音像を好む方。少なくとも激しいギターサウンドの曲、デジタル音源がたくさん入っているミドルテンポな曲、音数の少ないバラードなどジャンルと構成された楽器の数に合わせて自分の好みの音源を用意しておく事は重要だと思います。Mix師に渡しても良いですし、自分が迷った時の比較対象になります。全体のMix感の比較にも使用できます。この曲に比べで低音が大きいなど、オーダーの際に参考になります。しかしそもそもの内容物が違うので、参考音源と同じにはならないので、あくまでも比較の参考として使用しましょう。
まとめ
歌い手さんがMixにおいて必要な能力は楽曲の完成図を想像すること。世界に1つの貴重な音源を生み出す行為は、あなたにしかできないことです。Mix師はその完成に向かって、音響的な手法を提案すること。この音源を完成させる為に色々な手法を試していきますが、音源の完成図を直接見ることはできません。この立場の違いを頭の片隅に置いておくと、より作業がスムーズに進みMixという奥の深い世界を楽しむことができると思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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