ソフトシンセとマイクで録音した音声の混ぜ方(録音された空間をイメージする)

Mixの概念

最近では毎月、何かしらのソフトシンセが発売されていく状況です。

僕がオススメしているNATIVE INSTRUMENTS / KOMPLETEも数年に一度バージョンアップがありパッケージされるソフトシンセはどんどん多くなっていっています。

発売当初は500GBのハードディスクを使用しておけば十分に容量が足りていたと思いますが、現在最上位のバンドルでは2TBのOS SSDをほぼ占有するほどのライブラリが収録されています。

なぜ新製品のソフトシンセが発売され、多くの方達が購入するのか。

僕は3つの理由が存在すると思います。

  1. これまで発売されている商品では簡単に作り出せない音を作ることが可能になっている
  2. 実機を購入するにはメンテナンスの難易度コストが高い、ビンテージシンセのデジタル化
  3. 最新のトップチャートで使用されているような流行りの音色を、初心者でも簡単に使用できるようになっている

1、2はパソコンを使った音楽制作環境になったことで、業界全体が恩恵を受けていることで、1つの楽曲にかかるコストを大きく上げることが可能になりました。

しかし、このブログを読んでいる機材が大好きな歌い手さんやMix師、トラックメイカーさんにとって画面の中の平面のシンセサイザーは、少し気分の盛り上がりに欠ける商品だとは思います。

最近は小型のガジェットシンセやセミモジュラーシンセなど作業スペースに優しいコンパクトな商品もたくさん発売されていく中、VR技術などでヴァーチャルスタジオの中に自分が入り、大型のコンソールを皆さんがサブスクリプションで使用するような未来も想像できます。

来年も省スペース化に有利な、セミモジュラータイプの製品は続々と登場していきそうですね。

話を戻しまして、今回取り上げたいのは3の流行りの音色を、初心者でも簡単に使用できるようになったかわりに、ある問題が音楽業界の中におこり始めました。

流行りのソフトシンセを購入して、すぐに音源のプリセットを選択する。

プリセットの名前は有名なアーティストや演奏者の名前をもじった状態になっていることが多く、気分が高揚した状態でその音色を楽しむことができます。

ノリノリで音源を制作し、ボーカルを入れてミックスの作業に入った際にふと疑問に思うようです。

くろこ君
くろこ君

自分が歌ったボーカルとソフトシンセの混ざりが悪いなぁ

歌が全然聞こえないから、ボーカル10dBあげちゃおう

今度は歌しか聞こえなくなったぞ

とりあえず、マキシマイザーで押さえておくか。。。

裏スタ
裏スタ

こんな内容でずっと悩んでいませんでしょうか?

これはソフトシンセ時代にミックスを初める方がつまずく、現代特有の問題だと思っています。

最近のヒットチャートは音像が近い、ドライな音像の作品が多くリリースされているため、ソフトシンセの音像もドライな音質のプリセットが多く収録されています。

一方マイクで収録される音声の場合は、マイクの性質で一定距離以上近づけると、近接効果という低音が増幅する状態になるため、一定の距離を置いた位置で収録されることが普通です。

そのため同じ楽曲に配置された際に、奥行きの違和感が発生します。

音が遠いと感じたボーカルにプラグインで処理をしますが、そもそもこれは不可能に近い事を行っています。

反対にソフトシンセの距離を少し遠ざける事は簡単に可能です。

そこで今回はソフトシンセにつける、仮想空間(リバーブ)の考え方について解説していきたいと思います。

実際の楽器のように目の前に、楽器が存在し演奏しているプレイヤーを想像することで、ボーカルとのバランスを適正な配置することが可能になると思います。

裏スタ
裏スタ

それでは詳しい内容に入っていきましょう!



現在使用しているソフトシンセの本当の音を確認する

ビンテージシンセサイザーをデジタル化した商品以外は、エフェクト機能がついているソフトシンセが主流になってきています。

エフェクトとは、コーラス、ディレイ、リバーブやイコライザーなどです。

MASSIVEの場合はこちらがエフェクトセクション

気に入ったプリセットを選択した後、まずはかかっているエフェクトをオフにしてシンセが出している音を確認してみましょう。

ウェーブテーブルなどを使用しているシンセサイザーではない限り、かなり近い音像になったと思います。

シンセサイザーは生楽器と違い、電子的な空間を与えなければ平面で音が発音されているだけの音源です。

なので、シンセサイザーにはコーラスやリバーブ、ディレイなどのエフェクトが付属しています。

ここで思い出して欲しいのは歌ってみた、逆転のMix法(歌い手さん用)、6 ボーカルチャンネルに響きをつけてみるの記事で解説したボーカルの処理の仕方です。

目を閉じたときに、目の前にボーカルがいて、こちらに向かって歌っている姿を想像する。

コーラスやディレイに手を出す前に、その音像を作り出すことが重要です。

その後に、各パートで追加したいディレイやリバーブなどを入れていきます。

この手法をシンセサイザーにも、当てはめて考えてみます。

現在聴いているシンセサイザーは目を閉じて聴いても、平面で信号が鳴っているようにしか聞こえない状態だと思います。

そこで平面で存在しているこのシンセサイザーに仮想空間を与えます。

シンセサイザーのエフェクトセクションはオフにしたまま、インサートでプラグインを挟んで行きます。

どのリバーブでもいいですし、プラグインのパッケージ購入、機能の重複に気をつけるで紹介した、Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-Inのようなレコーディングスタジオをシュミレートするプラグインでも大丈夫です。

響きの長いプリセットではなく、小さな部屋をシュミレートしたプリセットを選択します。

ピアノなどの現実に存在する楽器のような気持ちで、目の前に存在していたとしたらどのような響きを持つ楽器なのか

それを想像して自分の思う形に響きを考えてみてください。

そして他の楽器との関係性を確認してみる。

気に入った音色を選んだとしても、ボーカルよりもその音色が前に出てしまっていないかどうか。

確認しながら、ルームの量を調節していきます。

こうすることによってマイクで録音された音声との、距離感があわせやすくなると思います。



ボーカルの邪魔をしている物は何か?

最新のシンセサイザーのプリセットは

最近の音楽の傾向に合わせているので、ドライな音像が多く含まれている

近い音は遠くできるがその逆は難しい

流行りの音色をいれることは、製品を販売するためにはすばらしい音色ですが、楽曲の中に入れていくとなると意味がかわってきます。

毎月リリースされていく楽曲の主役は、ほとんどボーカルです。

このようなことを気にしないまま、ソフトシンセのプリセットをそのまま選択して楽曲制作を進めていくと、伴奏がボーカルの左右に壁のように配置されてしまい、その後のミックスの難易度がドンドン上昇してしまいます。

そこでソフトシンセに空間をつけてボーカルよりも少し奥まった位置に配置し、必要であればその後にコーラスやディレイ、リバーブなどのエフェクトをインサートやセンドで追加していくと、調整のしやすいミックスを進めることが可能だと思います。

裏スタ
裏スタ

音楽はいつも相対的です!



サンプラー系の鍵盤楽器

ソフトサンプラーもシンセサイザーの音源と同様にエフェクトを外し、まずは目を閉じて実際に目の前でなっている状態を想像することが重要です。

ルーム系の調節のセクションがあるサンプラーも多いのでその機能をオフにしてみるといいと思います。

KONTAKT The MAVERICKの場合はこちらがエフェクトセクション

ドラム音源

現在流行っているドラム音源はXLN Audio / Addictive Drums 2FXpansion / BFD 3だと思いますが、これらの音源も同様にエフェクトやイコライザーなどをオフにした状態から始めることをオススメします。

XLN Audio / Addictive Drums 2の場合はこちらがエフェクトセクション(一括オフ)

Mix師の中には、これらのドラム音源の音を嫌う方も多くいますが、エフェクトやイコライザーをオフにした状態のサウンドはそこまで違和感のある音像ではないと僕は思っています。

エフェクトをオフにした状態で、ドラムセットの録音されたサンプル素材を選択する。

まずはここから始めるべきです。

XLN Audio / Addictive Drums 2の場合はこちらがエフェクトセクション(個別にオフ)

さらに細かく作業していく方法では、ドラム音源から各パートをマルチ出力して、それぞれのアウトに個別にルームエフェクターを追加していきます。

これはマイクを立てた距離などをシュミレートしていくためです。

Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-Inでも可能ですし、Antares Audio Technologies / MIC MODなども面白いと思います。

お持ちのマイクが歴代のマイクの音に変わる!?

Antares Audio Technologies / MIC MOD

自分の使用しているマイクを別のマイク特設に寄せることができます!

チューブのサチュレーション具合をコントロール可能

近接効果の変更をシュミレート可能

7

音質

8

操作スピード

9

マニアック度

7

痒いところに手が届く

自分の好みのマイクにリマイクした後、それぞれのバランスをとり、その後にドラムを録音した部屋をシュミレートするルームエフェクトを追加します。

これらの操作はドラム音源の中で調整可能なソフトもありますが、ソフト単体の値段設定を考えると、皆さんがお持ちの別売のプラグインで処理する方が、お金のかかっているドラム音源を作れると思います。

またオリジナリティーという意味でも、世界に1つのドラムマシーンを作ることが可能になります。

一度、自分のデフォルトキットを作ってしまえば、テンプレートや設定インポートで使用することが出来るので、時間のある時にぜひ試して欲しい方法です。

裏スタ
裏スタ

楽曲を制作するときに、いつものドラムキットが入っている状態から作業を始めると

リファレンス音源と同じような機能も持ちます。

低音はこのくらい出ているのかなどの、目安になってくれて便利です!

リファレンス音源の重要性の解説は、Mix師がMixの前に行う大切な行動の記事を読んでみてください。



サンプラー系の音源の場合は収録されたフォーマットにも気をつかう

現在作業をおこなっているセッションのビットレートが32bit96kHzなどの高音質の場合、自分が録音したトラックとサンプラーから発音されたトラックを比較すると、サンプラートラックのほうが広がりのないサウンドに感じてしまうこともあるかと思います。

サンプラーの収録フォーマットが16bit44.1kHzの場合、ハイレゾ音源のボーカルにCD音源のピアノを混ぜて聞いているような状態になってしまいます。

ドラム音源の場合は、低いビットレートが逆に迫力につながることもあったりしますが、ピアノやストリングス音源のサンプラーを使用するときには、収録フォーマットも意識しておくと良いと思います。


裏スタ
裏スタ

それでは空間作りに便利な、オススメのリバーブを3つ紹介したいと思います!

Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-In

スタジオシュミレーターの中で一番!

Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-In

大きさは大中小、用途に合わせた3つの録音ブース

3つのマイクセッティング、距離は自由自在

簡単プリセットで初心者も安心

8

音質

7

操作スピード

4

マニアック度

9

痒いところに手が届く

こちらのDSPとプラグインの購入の必要があります。


Mix用とRec用オーディオインターフェイスを分けて考えるで紹介したUniversal Audio Apollo Twin Xなどを使用している方は、プラグインの購入のみで使用可能です。

ボーカル、ピアノ、ブラスセクションからギターアンプまで、大中小の3つの録音ブースをシュミレート可能で、ルーム調整に必要な機能を持っているプラグインです。

現在発売されているルーム系プラグインでは、Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-Inが1番流行っているように思います。

インパルスレスポンス(IR)と呼ばれる響き方を測定したデータを使用したタイプのリバーブよりも、設定の微調整が可能です。

3箇所、別々の場所にマイク設置可能で、それぞれ混ぜ合わせることもできるので、色々な組み合わせが可能です。

リマイクモードでインサートで使用するモードと、リバーブのようにセンドで使用するモードがあるので用途に応じて選択可能です。

あらかじめ各楽器のプリセットが存在しているので、初心者の方でも安心して使用することができます。

裏スタ
裏スタ

実在するスタジオのルームシュミレートプラグインは今後もぜひ開発してほしい商品です!

WAVES / IR1 Convolution Reverb

インパルスレスポンス(IR)を取り込むことが可能なリバープ

WAVES / IR1 Convolution Reverb

WAVESが作成した膨大なIRデータを使用可能

自分のお気に入りのハードウェアリバーブから作ったIRデータも使用可能

IR部分以外は簡単設計

8

音質

8

操作スピード

5

マニアック度

6

痒いところに手が届く


インパルスレスポンス(IR)を読み込んで使用するリバーブです。

WAVESがあらかじめ用意してくれている膨大なIRを使用するだけでも、十分価値があります。

裏スタ
裏スタ

たくさんのスタジオ、ホール、自然環境など色々あって選びきれません!

またお気に入りのハードウェアのIRを作成して使用することも可能なので、ハードウェアリバーブのお気に入り設定をプラグインにして持ち運ぶことが可能です。

商業スタジオに所属しているエンジニアの中には、自分のスタジオのIRデータを録音している方も多く、お気に入りのIRデータ交換が密かにおこなわれています。

ここ10年で取り壊しになったスタジオも多く、IRデータは貴重な資源だと僕は思っています。

キャビネットシュミレーター関係もIRデータを使用している物があるので、モデリング技術とは違う方向の発展性が楽しみです。

Eventide / Tverb

インパルスレスポンス(IR)を取り込むことが可能なリバープ

Eventide / Tverb

これであなたもデヴィッド・ボウイになれる!?

ちょっとユニークなリバーブプラグイン

独特な質感付加に!

8

音質

8

操作スピード

5

マニアック度

6

痒いところに手が届く


デヴィッド・ボウイの作品の中で使用された手法をシュミレート可能なプラグインです。

Universal Audio / Ocean Way Studios Plug-Inよりコントロール可能な部分が少ないですが、独特な考え方のセッティングなので色々使用用途があります。

1つのマイクは、素材の近くに固定で、残り2つのマイクを部屋の中に自由に配置可能です。

信号の大きさが一定になったときだけ作動する仕組みがついている(ゲートといわれる機能)ので、大声で張り上げた部分のみ付加するルーム成分を追加できたりします。

この機能を応用して、信号の大きさで、3段階の違うルーム感を付加することが可能です。

シンセサイザーに付加するルームとしても、リッチで効果的だと思います。

裏スタ
裏スタ

ゲートリバーブをまだ試していない方は是非使ってみて欲しいです!



まとめ

今回はソフトシンセとマイクで録音した音声の混ぜ方(録音された空間をイメージする)という内容で解説してみました。

時間軸の変化を味方につけるの記事でも解説しているように、どうやって2つのスピーカーから出てくる音を立体的に聴こえさせ、楽曲の説得力を上げていくか。

ドライ音と響き音の関係は、物体とそこから伸びる影の関係に近いです。

影があるからこそ、物が立体的に描写されます。

音を立体的にするには、響きが重要

響きの付け方は、色々で人によって独自性があり、響きの積み重ねによってMix師の色がでてきます

今回紹介したプラグインは、その一部でしかありません。

是非、自己流の影の付け方を研究してみてください。

裏スタ
裏スタ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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