音源を作成する時に使用したミックスデータの安全な保存方法

Recの心得

皆さんはお仕事やプライベートで色々なデータをPCに保存していると思います。

突然のPCクラッシュや、不注意でデータを失いヒヤっとした経験は誰でもあることだと思います。

音楽制作で使用しているデータも写真データと同じように、PCのファイルなので使用しているファイルがなくなってしまえば、楽曲の一部分が再生出来なくなります。

今回は現在エンジニア界で流行っている安全なデータ保管方法を解説していきたいと思います。

裏スタ
裏スタ

それでは詳しい内容に入っていきましょう!



音源のデータは誰が保管すべき物なのか

初めにこの部分を理解しておく必要があります。

アーティストが音源を作る時、何かの記憶媒体に演奏を記録してそのコピーを音楽配信サービスやCDなどに複製して販売します。

それらのサービスに納品する為の元となる音源を原盤と呼びます。

その原盤と呼ばれる、音声データを制作する費用を出している人が音源のデータを保管する必要があります。

このことを理解していない人は業界の中でも多く、エンジニアや、音楽配信サービスが保管してくれる物と勘違いしていることも多いです。

宅録をされている方は、アーティスト、エンジニア、原盤保有者の3役を1人で行っているので音源のデータを自身で保管する必要があります。

将来、レコード会社や音楽出版社、芸能プロダクションなどと契約する際にこれらの原盤データを販売したのちに契約となることもあるので大切に保管をしておくと良いと思います。

また他の方のお仕事をした時は、ミックスのOKを頂いたら速やかに原盤保有者にDAWのデータなども含めてお渡ししておくことを忘れないようにしましょう。

その際に自分のミックスの必殺技などを隠しておきたい方は、使用したプラグインなどを全部取り除いたセッションを作成してお渡しすれば良いと思います。

重要なのは、音源に使用したOKテイクをわかりやすくしておくことです。

10年後などに、関わったアーティストがリミックスアルバムなどを発売する時に録音したけど使用しなかったトラックなどがわかりにくいと次に作業するエンジニアさんに迷惑がかかってしまいます。

また、自分が原盤の権利を持っていない音源のデータを勝手に使用することは良くないことなので覚えておきましょう。

バックアップを作るという考え方

世界に一つだけのデータの状態を回避する

DAWに録音をしていく過程では常に、世界に一つだけのデータを作っている状況が続いています。

オリジナルの音源を作っていくので当たり前のことなのですが、よく考えるととても怖いことです。

そこでエンジニアは毎日の仕事の終わりにバックアップを作成します。

デジタルデータは複製が簡単に可能なのは便利ですね。

同じ筐体の中にバックアップを作成しない

同じハードディスクの中に、別のフォルダを作ってコピーを作成しても物理的なハードディスクが故障したらデータは同時に二つともに無くなってしまいます。

作業をするハードディスクと、バックアップをとるハードディスクはわけて準備しましょう。

可能であれば、データが置かれている場所を遠ざける

二つのハードディスクにコピーをしておいたとしても、保管している建物が火事になってしまったとしたらどうでしょうか?

保管している場所は、離れれば離れているほど良いです。

大手の銀行などが、データセンターを東京と大阪などに分散することも同じ理由です。

これらの概念がまず重要になってきます。

具体的なバックアップ案

バックアップの概念を理解した上で具体的な方法を提案していきたいと思います。

ある程度自動化させる方法や、人間の目視を組み合わせた方法などがありますが大切なことは上記の概念をしっかりと理解することです。

AppleユーザーであればデフォルトのTime Machineを使用する

とても簡単で自動化されたバックアップ方法になります。

システムが入っている領域と作業データが入っている領域よりも3倍ぐらいの大きさのハードディスクやSSDを準備して、Time Machineを設定する。

Macの電源が入っている時にデータの変更があった部分を自動でバックアップをとってくれます。

差分バックアップという方式で、時間軸のスナップショットもとられていきます。

これは、昨日の13時にデータはこのような配置だったというように当時のデータの置かれていた状況なども保存していきます。

更新があったファイルのみを追加していくので、データ量も節約しながら保存が可能です。

Time Machine用のハードディスクがいっぱいになると、一番昔の状況を随時削除しながらデータを更新していきます。

監視カメラの24時間録画のような仕組みです。

僕はこのTime Machine用のハードディスクにハードRAIDタイプの大型ハードディスクの使用を推奨してます。

コンパクトなRAIDストレージ

PROMISE / Pegasus32 R4

コンパクト設計

わかりやすい専用ソフトウェア

USB-C ポートx 2、Thunderbolt™ 3 (40Gbps) または USB 3.2 Gen 2 (10Gbps)対応で高速データ転送

3

ファンノイズ

6

操作スピード

7

マニアック度

8

安定性


RAIDとは、複数のハードディスクを合体させてデータの安全性を高める技術で万が一の故障に備える仕組みです。

ソフトRAIDとハードRAIDの違いは、OSでRAIDを管理するかハードディスク側の物理ハードウェアでコントロールするかです。

ソフトRAIDだとOSに問題があった時に思わぬ不具合が発生すると大切なバックアップが使用できなくなるので、今回はハードRAIDを選択してください。

またRAIDの仕様によって安全性や処理スピードなどが違いますが、今回はバックアップ用のハードディスクに使用するのでコスト面で導入しやすい物で良いと思います。

ファンノイズがそれなりに発生する商品なので、少し離れた場所への設置が必要になると思います。

裏スタ
裏スタ

僕はRAID5を基本的に使用しています。

安全性とパフォーマンスの面で一番効率が良いです。

しかし物理HDD2台ではこの方式は使用出来ないのでRAID1を使用します。

この方式で注意しなければいけないことは、自動化をしたつもりがうまく設定されておらず実際はバックアップされていなかったことが後から発覚するケースです。

どんなに便利な仕組みも、設定しなければ動きません。

使用する場合は定期的に正常に動いているかのチェックを怠らないようにしましょう。

作業ハードディスクとバックアップハードディスクを用意して作業後に手動でバックアップをとる

DAWが発売された当時からおこなわれている方式です。

商業スタジオなどでは、この方法が実施されています。

差分バックアップや、丸ごとコピーをとる方法など自由に操作可能です。

二つのフォルダの状況をひとめでわかりやすく表示するソフトなどもあるので、積極的に活用していきましょう。

DAWの編集機能の中には、WAVを直接編集を加える破壊編集などもありファイル名は同じでも実際は編集されていたというようなことがあります。

バックアップソフトを使用すると、そのような場合も検索可能なので大変便利です。

この方式は、毎回の指示を人間がおこないますので指示が間違えば大きな事故になります。

例えば、作業前のデータを作業後のデータにバックアップをとってしまえば1日分の作業が台無しになります。

バックアップの作業は、1日の作業が終わって最後の作業になるので深夜に行うことも多いです。

人間ですので、一番判断力が低下した状態で大切なバックアップを行うことになります。

バックアップの方向性のプリセットを作るなどして、安全に作業をするようにしましょう。

色々なソフトがあると思いますが、僕が使用しているソフトをご紹介いたします。

フォルダのバックアップ管理ソフト

FreeFileSync

複数のバックアップ方法が選択可能

日本語対応

バックアッププリセットを保存可能

8

機能性

10

操作スピード

3

マニアック度

9

安定性

Dropboxなどのクラウドサービスを使用して、作業領域を常にクラウドと同期する

AppleのTime MachineはPCに直接繋いだHDDやSSDにバックアップをとることが多いですが、Dropboxなどのクラウドサービスを使用するとバックアップを自分の作業場所以外のどこかにとることが可能です。

クラウドサービスは、サービス会社のサーバーと自分のHDDのデータを更新して常に同じ状態にし続けるサービスです。

自宅にデスクトップのPCがあり、外で使用する用のノートPCも持っているような場合、クラウドサービスを使用するとサーバーを経由して、3つのデータは常に同じ状態に更新されていきます。

大手のクラウドサービスはサーバー内のデータを分散して世界に保管しているので、個人が使用しているPCに比べると安全性は大変高いです。

注意が必要なのは、3箇所のデータは常に同じ状態に更新されていくサービスなのでどこかで間違ったデータの更新をすれば全ての場所が間違った状態になってしまいます。

クラウドサービスによっては、何世代か前の状態を保存してくれるサービスもありますがDAWのデータはワードなどの書類と違って複数のファイルの集合体で構成されています。

間違ってしまった状態から元の状態に戻すことは大変困難になると思います。

また別の誰かにアクセスされる危険性があるのではと思う方がまれにいらっしゃいますが、世界中の方が同じサービスを使用して色々なデータを保存しています。

あなたのデータに価値があると思ったとしても、大きな入れ物の中からあなたのデータを探しそのデータの意味を理解するまでにかかる時間と労力を考えると、安全だと判断するということかと思います。

当然、身近な方にIDとパスワードを伝えれば大変なリスクに繋がります。

2段階認証などの設定をするなどの対策は徹底して使用するようにしましょう。

クラウドサービスを使用すると、完成した音源のお渡しなどもスムーズになるので作業効率もアップすると思います。

これまで紹介した中で一番コストが高いサービスなのですが、物理HDDやSSDが壊れる心配をしないという管理コストからの解放はとても素晴らしいことでもあると思います。

初心者にも使いやすいインターフェース

Dropbox

スマホからでも操作が簡単

シンプルインターフェース

多機能で安定性もバッチリ

9

ユーザーインターフェース

8

機能

9

業界の普及率(僕の体感)

10

多機能

注意が必要な点は、クラウドサービスの利用規約をよく読むとデータの保証はしていないサービスがほとんどです。

消えない自信はあるが、中身のデータのバックアップは皆さんでとっておいてくださいという姿勢のサービスなので単体での使用は控えましょう。

実際にバックアップの方針を決定する

これらのいくつかの方式を、コストとデータの重要性に合わせて1つから2つを同時に行う方法が良いと考えます。

ご自身が原盤を保有しない方であれば、作業が完了後データを納品してしまえばある程度したら保管の義務は当然ありません。

原盤を保有している方でいつまでも安全に保管しておきたいという方は、クラウドサービスも使用することになると思います。

大手のレコード会社やテレビ局などでも、大半はコスト面でデジタルテープメディアバックアップを使用しているとは思いますがクラウド化は時間の問題かと思います。

全ての方に当てはまることは、現在作業中のデータを毎日バックアップをとるということは徹底して欲しいと思います。

アーティストが捻り出した一瞬を保管した音声です。

同じ演奏は二度とすることは出来ません。

裏スタ
裏スタ

エンジニアとは、良い音で録音することの前に、音声を安全に保管する技師であると僕は思います!

テープメディアが使用されていた時代にはトラックシートという紙が存在していました。

テープメディアは録音されている音声を画面で確認することが出来ないので、テープの各トラックに何の音が入っているのかや使っても良いトラックなのかなど様々な情報が記載されていました。

先輩のエンジニアでこの時代を生きてきた方は、不思議とDAWのデータも大変綺麗に整頓されている方が多いです。

24トラックしか使用出来なかった時代と現在の∞に近いトラックを使用出来る時代に育ったエンジニアでは、根本的に考え方が違うようです。



まとめ

今回はDAWのデータを安全に保管する方法をいくつかご紹介しました。

アーティストの一瞬を切り取った大切な音声を安全に保管することは、エンジニアが良い音を録音することよりも大切なことだと僕は思っています。

音楽配信サービスの普及によって、2chの音源は半永久的に安全に保管されている時代になりました。

しかしあなたが現在制作しているオリジナル音源は、世界にただ一つあなたのPCの中にしか入っていないということを再認識して欲しいと思います。

脅したいわけではなく、それだけ貴重な情報を保有しているということです。

裏スタ
裏スタ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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