ドルビーアトモスの空間オーディオに対応のニュースと共に、気になるニュースが飛び込んできました。
Apple Music 追加費用なしでロスレスオーディオに対応するとのことです。
僕が音楽的に注目しているのは空間オーディオよりも、ロスレスオーディオになります。
これまでの音楽サブスクリプションサービスはAACやmp3などの圧縮されたオーディオを取り扱うサービスがほとんどでした。
ハイレゾと呼ばれる高ビットレートを取り扱うサービスも1部ありましたが、料金が高く1部の方のみが使用していました。
しかし好きな時に、好きな曲を聴ける利便性はリスナーが求めた一つの答えだったと思います。
今回Apple Musicでは定額の980円でロスレスオーディオの提供をはじめるとの事でリスナーの期待が高まっています。
ロスレスオーディオ(Apple Lossless)とハイレゾは若干の違いはあるものの、かなりの音質の向上と言えると思います。
iPodが音楽業界にもたらした利便性と共に失われた、音楽の「匂い」とも言える大切な成分が再度Appleによって復活するというニュースを僕は嬉しく思っています。
それでは詳しい内容に入っていきましょう!
リスニング環境の変化
リスニング環境の変化は時代とともに様々な変化を続けています。
録音技術のない時代は、演奏者が生演奏をおこない、リスナーが生演奏を聞いていました。
アナログの演奏に、アナログの耳、これは現代でも多くのリスナーに求められる一番感動を味わえる環境です。
電子楽器を一切使用しないフルアナログの環境は、贅沢な音楽の楽しみ方の一つだと思います。
その後、蓄音機やレコード、テープレコーダーと進化していきます。
アナログの演奏をアナログのレコーダーに録音していつでもリスナーが音楽を楽しむことが可能になります。
アナログのプレイヤーは物体として音楽を保管している為、物理的に接点が消耗していきます。
その為、音声の劣化や定期的なメンテナンスが必須になります。
しかし高級な機材を使用すれば、より生演奏に近い音質を自分のタイミングで聞くことが可能な為、現在も高級なスピーカーでレコードを聴く方達が存在しています。
一般的なリスナーは、利便性の高い携帯プレイヤーにシフトしていきます。
携帯プレイヤーの歴史は、SONYが開発したウォークマンと呼ばれる携帯カセットプレイヤーが有名だと思いますが、DATやCD、MDを経てAppleのiPodを中心とするデジタルプレイヤーが市場の中心になっていきます。
その後サブスクリプションサービスに以降していき、今ではスマートフォンの1部に内包され専用のプレイヤーを持っている方は少数派だと思います。
利便性の追求によって音質の進化は後回しにされてきた
利便性という意味では素晴らしい進化でしたが、音質という意味ではレコードやカセットテープ以降は劣化を続けていった歴史でした。
デジタルフォーマットはプログラムを使用した音楽の保管方式の為、アナログの録音方式とは根本的に違いがあります。
アナログのように滑らかな曲線では記録できません。
アナログは純粋な曲線で波を保管するので、デジタルで表現することはできません。
ハイレゾ商品の中によりアナログ近い表現に近づける為、DSDと呼ばれるフォーマットが出てきましたが、使用する方があまりいない為コストが高く流行りませんでした。
デジタルフォーマットは、何度もコピーや再生を繰り返しても劣化が少ないという利点もあります。
アナログフォーマットで保管されていた音声を取り扱うことがありますが、30年前の音声になると状態はかなり厳しいです。(適切な温度、湿度管理が必要)
デジタルであれば、データの複数コピーを作ればいつまでも同じ状態をキープ可能です。
こちらの動画のように拡大していくとギザギザの波になっていて、ポイントとポイントをPCに記録していき音声になっています。
この波の高さをビットレート、横をサンプリングレートと呼びます。
DAT(16bit48kHz)>CD(16bit44.1kHz)>MD(少し特殊なフォーマット)
の順番にデジタルフォーマット上の音質が不利になっていきます。(MDは規格自体はCDと同等の音質でしたが、商品化の段階であまり音質の良い商品が少なかった印象です。)
その反面利便性は上がっていきます。
DATはDigital Audio Tapeの頭文字をとって、ダットと呼ばれていた規格でデジタル音声を磁気テープに記録する物でした。
CDよりも高音質でしたが、テープの為巻き戻しや早送りの待ち時間があります。
CDは現在も使用されていますが、自分でオリジナルのプレイリストを作成するにはPCなどに取り込み焼き直す必要があります。
MDはMiniDiscの略称でエムディと呼ばれていた規格です。
小さなCD(書き換え可能)がケースに入っている商品で、CDと同じくらいの時間分の音声をCDからデジタルコピー可能な商品です。
これらのデジタル商品はプレイヤーと記録されたディスクやテープを入れ替えながら聴きたい音楽を再生する必要があり、この携帯プレイヤーにもっと大量の音楽を詰め込みたいと思うようになります。
外国の映画に出てくるようなジュークボックスをコンパクトなプレイヤーで実現できれば良いのにとみんな考えていたのだと思います。
CDを何枚も格納できるデッキなども発売されていきましたが、自分が所有している音楽全てを持ち歩ければ良いのにと、一つ希望が叶えば更にと技術はどんどん進んでいきます。
そして、iPod系のHDDやフラッシュメモリを使用したプレイヤーが発売され始めます。
DAWでも使用されているWAVデータ(CDと同等の音質)を使用する商品もありましたが、容量の問題でmp3やAACが使用され始めます。
mp3やAACの圧縮オーディオはデータ容量を削減する為に、音声の認識に必要とないと開発者が思った帯域をスリム化させることでデータ容量を少なくした方式です。
中でもAACは高音質で低データ量を実現している為、映像関係でも多く使用されています。
もちろんこの技術によって、自分の所有する音楽を全て持ち運べるという夢は叶いましたが音楽を構成していた重要なパーツが失われてしまいました。
一般的なリスナーに、レコード、WAV、mp3の違いは理解できるか
僕が誰かに圧縮オーディオの話をすると必ずこのような会話になります。
一般的なリスナーにはmp3とWAVの違いなんてわからないでしょ
Mix師のような特殊な仕事をしている人達だからわかる違いじゃないですか?
ではリスナーはどうして、実際のライブにいくことをやめないのだろうか
それは、ライブには臨場感や一体感があるからでしょ
音源と比べるのはおかしいですよ
そうなんです。現在の主流のAACやmp3には音楽に大切な
僕は「匂い」と表現している部分が削ぎ落とされていると感じています。
話を冒頭に巻き戻して考えてみます。
クラシックの時代、食事やパーティの時に、演奏家を呼んで演奏をしてもらい音楽を楽しんでいました。
これは現在のライブに近い状態だと僕は考えます。
当然音楽の「匂い」を感じることが出来たし、この環境はフルアナログで音楽が耳に届きます。
その場の空気感でも影響を受けていると思いますが、デジタルのギザギザのエッジのない状態の音楽はとても心地の良いものです。
これは自然の中にいるのと、自然のYouTubeを見るのとも似ています。
視覚的な変化は捉えやすいですが、音も同じことがいえます。
時代は変わって最新のApple Musicでは僕らMix師が「匂い」をギリギリ感じられるかなと思う状態(WAV 24bit96kHz)の1/37ぐらい容量でしか音声を配信していないです。(レコードやアナログテープと比較したら更に情報量は少ない)
難しい数値の話をすると、違いがわかる人だけが感じていることだと思ってしまうかもしれませんが、37倍に薄めたカルピスを飲んで、夏のバカンスを楽しむような感覚でしょうか。
人間の脳は、Mix師の脳も、リスナーの脳も同じ物だと僕は考えています。
むしろ、リスナーの方が本能的に本物を選択する能力は高いと思っています。(知識に邪魔されることなく良いと思う物に引き寄せされていく)
現在も当時の音楽リスニング環境に似ているライブが求められる意味はこの部分が大きいと感じます。
僕がアナログの効果を実感した体験としては、アンプにも同じような効果が感じられました。
オススメ宅録Reamp Box(リアンプ・ボックス)3選で、デジタルとアナログの融合で宅録の可能性を感じています。
リスニングする楽しみを取り戻す
Apple Musicを始めとする、定額配信サービスが普及してほとんどの楽曲を持ち運ぶことが可能になりました。
しかしそれは、37倍に薄めたカルピス状態です。
人々がジュークボックスの未来を追い求めた結果、先にその部分が進化していった結果ですので、これはこれで良いことだった僕は思います。
今回のロスレスオーディオ(Apple Lossless)で基本的に4倍くらいに薄めた状態の音声が聞けることになると思います。
それでもまだ、レコーディング中に使用している音声やレコード、アナログテープにはかないませんがある程度「匂い」を感じられる物になってくると思います。
今まで、37倍をデフォルトとして生活してきた人達にとってどのような衝撃があるのかは、難しいところではありますが、音楽の衝撃がライブの衝撃に近くなるという意味で考えると良いことのように思います。
Maktar / Spectra X2
iPhone用ポータブルDACアンプ
Maktar / Spectra X2
最高クラスのDACチップ「ESS SABRE ES9118」を採用
最大32bit 384kHzのPCM音源/11.2MHzのDSD音源までサポート
手のひらサイズで携帯性抜群、重量15g
音質
持ち運び安さ
マニアック度
クール
iPhoneからヘッドフォン端子が無くってからしばらくたちますが、Bluetooth経由のワイヤレスイヤフォンを使用している方が多いと思います。
ロスレスオーディオ(Apple Lossless)やハイレゾ商品を本当の意味で楽しみたいのであればポータブルヘッドホンDACアンプの購入をオススメします。
Lightning端子に接続して、有線のヘッドフォンやイヤフォンを使用出来るようにする商品です。
DACは音の好みがありますので、実際に使用してからの購入をオススメいたします。
是非オーディオショップで試していただければと思います。
まとめ
Apple Music 追加費用なしでロスレスオーディオに対応について解説いたしました。
ロスレスオーディオ(Apple Lossless)に対応し、料金設定は変わらずという内容は本当に素晴らしい音楽の未来を感じました。
今まで聴いてきた音楽が、実は37倍に薄めたカルピスのような物だったという現実を再認識する大切な変換点だと思いました。
目を閉じて感じるアーティストの想いを是非体感してもらえればと思います。
今後DSDのような、レコードやアナログテープのようなフルアナログに違いフォーマットが主流になっていくと更に良いなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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