※本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)を含みます。
今回は、音楽配信のディストリビューションサービスについて書きたいと思います。
以前このブログで、TuneCoreのロイヤリティ前払い制度「Direct Advance」について書きました。
あわせて読みたい
あの制度を調べていて、一番引っかかったのは金利でも審査基準でもありませんでした。未返済の残高がある間は、リリースを取り下げられないという一文です。
配信サービスの比較記事はたくさんあります。ただ、そのほとんどが年額いくら、還元率何%という入口の条件だけを並べています。
実際に効いてくるのは、そこではないと思います。
やめるときと、乗り換えるときに何が起きるか。ここが各社でまったく違います。

年額が安いところを選べばいいんじゃないですか?

それで選ぶと、日本のリスナーに1曲も届かないことがあります。
今回はTuneCore Japan、BIG UP!、CD Baby、LANDR、DistroKidの5社について、公式サイトと利用規約、ヘルプセンターを全部読んで比較しました。
先に立場を明かしておきます。僕が使っているのはCD Babyです。そしてこの記事を書いた結論は、必ずしもCD Babyを推すものにはなりませんでした。
なぜそれでも使い続けているのかは、最後に書きます。
※本記事の料金・条件は2026年10月時点で各社公式ページを確認したものです。価格や仕様は変更されるため、申し込み前に必ず公式サイトでご確認ください。

まず結論:日本のストアに出したいなら、選択肢は実質2つ
料金の話をする前に、これを先に書きます。各社の公式ストア一覧で、日本の主要ストアに配信できるかを確認した結果です。
| LINE MUSIC | AWA | mora | レコチョク | 楽天ミュージック | |
|---|---|---|---|---|---|
| TuneCore Japan | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| BIG UP! | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| LANDR | ○ | ○ | — | — | — |
| CD Baby | — | ○ | — | — | — |
| DistroKid | — | — | — | — | — |
DistroKidは、公式の配信先一覧に日本のストアが1社も載っていません。
CD Babyの配信パートナー一覧にあるのはAWAとKKBOXだけです。LANDRはLINE MUSIC、AWA、KKBOXまで。moraとレコチョクはどちらにもありません。
一方でTuneCore JapanとBIG UP!は、挙げた5ストアすべてをカバーしています。
ここで注意したいのは、「世界185カ国に配信」と「日本のLINE MUSICに並ぶ」は、まったく別の話だということです。海外サービスも配信国としては日本を含んでいます。でも配信先のストアに日本のサービスが入っていなければ、日本でLINE MUSICを使っているリスナーの画面には出てきません。
ただし、ここは冷静に見たほうがいいとも思っています。
実感として、Apple Music、Spotify、LINE MUSIC以外で聴いている人は、そこまで多くありません。moraやレコチョクに並ばないことを致命的と考えるかどうかは、自分のリスナーがどこにいるかで変わります。
その前提で表をもう一度見ると、問題になるのはLINE MUSICに届くかどうかの一点だと分かります。ここが海外サービスとの本当の分かれ目です。

Spotifyに出せれば十分じゃないんですか?

それも一つの考え方です。ただ日本だとLINE MUSICで聴いている人がかなりいます。自分のリスナーがどこにいるかで決める話だと思います。
では、LINE MUSICのシェアはどれくらいなのか
「LINE MUSICに届くかどうかが分かれ目」と書きました。ではそのLINE MUSICは、日本でどれくらい使われているのか。
数字で確かめようとして、ひとつ驚いたことがありました。
日本には、サービス別シェアの定点観測が存在しない
- 日本レコード協会の「音楽メディアユーザー実態調査」は毎年出ていますが、2023〜2025年度を確認した範囲で、サービス別の数字をまったく公表していません。あるのはカテゴリ全体の利用率だけです
- サービス別を出していたICT総研の調査は、2022年11月を最後に音楽版が終了しています
つまり、2026年のLINE MUSICのシェアを示す数字は、公開されていません。
ネットで見かける「日本の音楽サブスクのシェア」の円グラフは、だいたい2022年以前のデータか、数百人規模のアンケートか、グローバル数値の流用です。ここは調べてみて一番意外でした。
サービス別の実数が取れる、最後の調査
というわけで、サービス別の数字が公表されている最後の調査がこれです。ICT総研の2022年調査、回答者4,409名のWebアンケートで、無料プラン利用者を含む複数回答です。

LINE MUSICは6位。1位のAmazon Prime Musicの半分以下で、AWAの約3倍という位置です。
グラフを利用率(%)ではなく実数にしたのは、二次報道が載せている%が実数と計算が合わないからです。YouTube Musicは4.7%とされていますが、326÷4,409=7.4%になります。分母が公表情報から特定できないので、実数だけにしました。
そして、順位を下げ続けている
- 2016年:MMD研究所の調査で利用経験1位(36.3%)
- 2020年:ICT総研で4位
- 2022年:ICT総研で6位
- 2023年:ナイルの調査(回答者2,614名)で5位
サービス開始直後の2016年は1位でした。そこから下がり続けています。
ただし若年層では相対的に強く、学生3,120名を対象にしたペンマークの2023年調査では3位(14.4%)でした。ただこの調査、LINE公式アカウント経由で配信されているので、LINEをよく使う層に偏っている可能性があります。
しかもこの数字は、無料利用者を含んでいます
LINE MUSICはプロフィールBGMや30秒試聴など、無料で触れる導線が太いサービスです。
2020年2月時点の公表値で、有料会員が約200万人。それに対してプロフィールBGM機能の利用者は800〜1,000万人とされていました。4〜5倍の差です。
つまり「利用者ベース」の調査は、LINE MUSICにとって有利な数え方です。それでも5〜6位、ということになります。
なお有料会員数の公表値は、この2020年2月が最後です。6年以上更新されていません。AWAに至っては、会員数を一度も公表していません。
上位は3つに固まっている
もうひとつ、別の調査で時系列が取れました。マイボイスコムの1万人規模の調査です。隔年で同じ設計を続けているので、推移が見られます。

Amazon Music Primeが下がり続け、Spotifyが上がり続けて、2026年にほぼ並びました。差は1ポイント弱なので「並んだ」と書くのが妥当で、「Spotifyが抜いた」とまでは言えません。
ただしAmazon Music Primeは、プライム会員なら自動的に使える特典です。日本レコード協会も毎年これだけ分離して集計していて、含めるかどうかで全体の利用率が10ポイント動きます(2025年度調査で33.2%→23.6%)。
自分で選んで契約した人で見るなら、実質的にSpotifyとApple Musicの2強ということになります。
結論:致命傷ではない。ただし無視していいとも言い切れない
- LINE MUSICは、一般の人を対象にした調査では2018年以降どれも上位3位に入っていない
- その順位は時系列で下がり続けている
- しかも無料利用者を含む、LINE MUSICに有利な数え方をしてもそうなっている
なのでLINE MUSICに配信できないことは、致命傷ではありません。これが数字から言えることです。
ただし、2026年の数字は存在しません。「シェアが小さいから無視していい」と断言できるほどのデータも、実はないんです。
押さえられるなら押さえたほうがいい。その程度の話だと思っています。
料金を並べてみる
一応、入口の値段も並べておきます。
| 料金 | 条件 | |
|---|---|---|
| TuneCore Japan Unlimited | 年4,400円〜(税込) | スターターは年4,400円、スタンダード9,900円、プロ23,100円。リリース数は無制限 |
| TuneCore Japan Pay Per Release | シングル年1,551円 アルバム年5,225円 | リリース単位。2年・3年のまとめ払いもあり |
| BIG UP! | フリー:0円 ベーシック:シングル年500円 | ベーシックはEP 1,500円、アルバム3,990円(いずれも1年) |
| CD Baby | シングル$9.99 アルバム$14.99 | 買い切り。更新料なし |
| DistroKid | 年$24.99〜 | Musicianプラン。曲数無制限 |
| LANDR | 年$24〜 | Distribution Basic。Proは年$45。リリース数無制限 |
数字だけ見ると海外勢が安く見えます。DistroKidは年$24.99で曲数無制限ですから、日本円にすれば年4,000円程度です。
ただ、この表だけで選ぶと間違えます。理由を2つ書きます。
「100%還元」は、何についての100%なのか
ひとつめは還元率です。
TuneCore Japanは「収益100%還元」を掲げています。これは事実です。ただし公式サイトをよく読むと、100%なのは音楽配信だけでした。
| サービス | 還元率(公式表記) |
|---|---|
| 音楽配信 | 100% |
| 著作権管理(パブリッシング) | 85% |
| YouTubeコンテンツ収益化 | 80% |
| ミュージックビデオ配信 | 80% |
さらに著作権管理サービスについては、公式FAQにこう書かれています。
アカウント管理者から期間譲渡された音楽著作権を著作権管理事業者(JASRAC等)へ届出を行い
著作権は期間譲渡されます。「権利100%保持」という表現は、配信サービスについてのものです。著作権管理まで任せると、話が変わります。
他社はどうか
- CD Baby:買い切り$9.99だが、ストリーミング収益から永続的に9%が引かれる。MLC経由の機械的使用料は15%、SNS動画の収益化は30%、シンクは40%
- DistroKid:公式FAQで「How much of my sales does DistroKid keep?」の回答が「None.」。本当に100%。ただしSocial Media Packを使うと20%
- LANDR:購読中は100%。ただし解約すると以後15%が引かれる
- BIG UP!:ベーシックプランは100%。フリープランは国内ダウンロードのみ83%で、それ以外は70%
CD Babyの「買い切りで安い」は、長く聴かれる曲ほど割高になる構造です。$9.99は一度きりですが、9%は曲が再生され続ける限り引かれます。
BIG UP!のフリープランには、書かれていない制限がある
ここは調べていて一番驚いた部分です。
BIG UP!のトップページには「フリープランによるサービスや機能の制限もありません」と書かれています。ところが配信代行サービス利用規約の第6条の2を読むと、こうあります。
フリープラン会員は、シングル・EP・アルバムを問わず、月に1タイトルしか申請できません。
しかも審査で差戻しや否認になったものも1タイトルとしてカウントされ、使わなかった分は翌月に繰り越せません。
無料で使えるのは本当です。ただし対価は、還元率と申請本数の両方で払っていることになります。

トップページと規約で書いてあることが違うんですか?

読み方の問題かもしれません。ただ申し込む前に規約を開く人は少ないので、ここは知っておいていいと思います。
買い切り+9%と、年額100%。どこで逆転するのか
CD Babyの「買い切り+永続9%」と、TuneCore Japanの「年額+100%還元」。どちらが安いかは、その曲がいくら稼ぐかで決まります。
計算してみました。9%がTuneCore Japanの年額と並ぶ、年間の配信収益です。
| TuneCore Japanのプラン | 年額(税込) | 9%がこれと並ぶ年間収益 |
|---|---|---|
| Pay Per Release シングル | 1,551円 | 約17,200円 |
| Unlimited スターター | 4,400円 | 約48,900円 |
| Unlimited スタンダード | 9,900円 | 約110,000円 |
| Unlimited プロ | 23,100円 | 約256,700円 |
年間およそ49,000円を配信収益で超えないなら、CD Babyの9%のほうが安いということになります。
そして見落とされがちなのが、収益がゼロだった年の扱いです。
TuneCore Japanは1円も入らなくても年額がかかります。CD Babyは買い切りなので0円です。リリースのペースが不定期な人ほど、この差は効いてきます。
正直に書くと、インディーズでこの金額を安定して超える人は、そう多くないと思っています。
逆に言えば、超えるようになったら乗り換えどきです。その判断のために、この数字を置いておきます。
※CD Babyの初期費用(シングル$9.99、アルバム$14.99)は一度きりなので、上の計算には含めていません。また日本から海外サービスを使う場合、受け取り時の手数料や為替、源泉徴収の影響も別途あります。
やめたときに何が起きるか

ここからが本題です。
支払いを止めたとき、配信中の曲がどうなるか。5社で4通りに分かれました。
| 支払いを止めると | |
|---|---|
| TuneCore Japan | 配信停止。ストアから削除される |
| DistroKid | 原則削除。オプションを買えば維持できる |
| CD Baby | 買い切りなので配信は続く |
| LANDR | 配信は続く。ただし以後15% |
| BIG UP! | フリープランなら費用が発生しない |
TuneCore Japan:止めた瞬間に消える
公式FAQの表現はこうです。
該当プランで配信されているすべての楽曲が各配信ストアから配信停止(削除)されます。
年4,400円を払い続ける限り配信されます。払うのをやめた時点で、積み上げたものが消えます。
しかも「既に支払った利用料金の払い戻しはありません」と明記されています。解約の手続きは更新日の7日前まで。それを過ぎると次の1年分が自動で決済されます。
DistroKid:同じく削除。ただし逃げ道がある
DistroKidも、購読が切れると「your music will be removed from services」となっています。
ただしLeave a Legacyというオプションがあり、これを買っておくと購読が切れても配信が維持されます。注意点は、リリース単位の課金だということです。公式に「it is not a one-time payment for all of your releases」と書かれています。曲数が多いほど費用がかさみます。
そして価格が公式に公開されていません。申し込み画面まで進まないと分からない形です。
CD Baby:止まらない。ただし戻れない
買い切りなので、配信を維持するための更新料がありません。一度出したら、そのまま置いておけます。
ただし配信をキャンセルする場合、公式ヘルプに「cancellations are final」とあります。取り消せません。
LANDR:ここだけ設計思想が違う
LANDRは全ストアからの引き上げを「削除」ではなくpause(一時停止)と呼んでいます。Resumeすれば「reinstated as originally created」、つまり元の状態で復帰します。
購読をやめても配信は続きます。ただしその場合は以後のロイヤリティから15%が引かれます。
止める前提で作られている唯一のサービスだと思いました。
乗り換えるときに、本当に起きること

もうひとつ、ほとんど書かれていない話があります。他社へ乗り換えるときに何が失われるか、です。
順番を間違えると、再生数が消える

調べた全社が同じことを言っていました。新しい配信を開始してから、古い配信を止める。この順番です。
逆をやると再生数が引き継げません。BIG UP!の説明が率直でした。
移行先での配信が始まる前に他社での配信を停止してしまうと、再生数が引き継がれない可能性がございます。
そして具体的な待ち時間を公開しているのは、調べた範囲でTuneCore Japanだけでした。配信開始から約72時間待ってから旧配信を止めるよう案内しています。ただし公式も「同期は確証されていないため同期されない場合もあります」と書いています。
CD BabyとDistroKidには、乗り換え手順を説明した記事自体がありませんでした。
Spotifyの「90日」

ここが一番重要な数字だと思います。Spotify for Artistsの公式ヘルプに明記されています。
- 楽曲が配信停止されると、累計再生数と非公開の統計は90日間だけ保持される
- 90日を過ぎてから再配信しても「doesn’t recover the previous stream count or private stats」
- ただし月間リスナー、フォロワー、プレイリストやライブラリへの登録は影響を受けない
つまり配信を止めても、90日以内に戻せば累計再生数は生きています。過ぎたら戻りません。
逆に言うと、フォロワーと月間リスナーはそもそも失われません。ここを混同している説明をよく見かけます。
プレイリストとレビューは、再生数とは別の問題
再生数が引き継げても、プレイリストは別です。BIG UP!の説明がこれも率直でした。
プレイリストは商品ごとに紐づいているため、元の配信を停止したタイミングで、掲載中のプレイリストから外れてしまう可能性がございます。
TuneCore Japanは移管の案内の中で、「iTunes StoreとAmazon Musicではレビューが消去される可能性があります」と書いています。自社の管理外である旨も添えられています。
苦労して入ったプレイリストや、書いてもらったレビューは、乗り換えで消えることがある。ここは値段では測れない部分です。
ISRCは持っていける。UPCは会社による
ISRCは録音ごとに振られる識別子です。管理元であるIFPIの公式ページには、はっきりこう書かれています。
the ISRC should not be changed
権利者が変わってもISRCは変えるべきではない、という考え方です。ディストリビューターのものではありません。
実務上は、他社で取得したISRCを入力できるかどうかが分かれます。
- TuneCore Japan:ISRCもUPC/JANもそのまま入力して登録できる
- BIG UP!:ISRCを入力することで再生数をリンクできる。ただし「確実な引き継ぎを保証するものではございません」
- DistroKid:ISRCの持ち込みはMusician Plus以上のプランのみ。UPCは持ち込み不可。しかもアップロード後のISRC変更は不可(「the ISRC is locked in」)
- CD Baby:同一音源の再配信にはISRCを含むメタデータの完全一致が必要。UPCは承認後に変更できない
なおISRCが変わるとチャート集計がどうなるかについては、各社・各ストアとも公式には書いていませんでした。断定している記事を見かけますが、一次情報は見つかりません。
Apple側には、そもそも案内がない
Apple Music for Artistsの公式サポートを探しましたが、ディストリビューターの変更についても、配信停止についても、記事が存在しませんでした。
書かれているのは「contact your distributor for support」という案内だけです。Spotifyが90日という数字まで公開しているのとは対照的でした。
新しい配信先に、古いアーティストページを教える
もうひとつ、やっておいたほうがいいことがあります。乗り換えると、新しいディストリビューターはあなたのアーティストページを知りません。何もしないと、同じ名義のページがもうひとつできてしまうことがあります。
防ぎ方は、配信を始める前に既存のアーティストページのURLを伝えておくことです。Spotifyの公式ヘルプにこう書かれています。
いずれかの推奨ディストリビューターと連携する場合は、あなたのアーティストURLまたはURIを提供し、あなたの音楽がアーティストページに正しく追加されていることを確認してください。
TuneCore Japanの場合は、アーティストを登録するときにストアごとのURLを入れる欄があります。
Apple MusicやSpotifyなど、配信ストアごとのアーティストページのURLを入力ください。
対応しているのはApple Music、Spotify、Amazon Music、LINE MUSICの4つ。ただし、ここにも期限があります。
配信実績があるアーティストのプロフィールURLは配信開始後編集不可となります。
最初のリリースを出す前に入れておく。出してしまってからでは、その欄は触れなくなります。
それでもずれたときは、各ディストリビューターに修正依頼のフォームがあります。それとは別に、ストアのアーティスト向け窓口に直接連絡して、既存のページに紐付けてほしいと伝えるのも手です。Spotify for ArtistsやApple Music for Artistsから連絡できます。ページが分かれたままだと、フォロワーも月間リスナーも二重になります。

こちらから連絡していいんですか?

ページが分かれたまま放置するより、ずっといいです。
JASRACに登録する、という意味
ここまではずっと配信の話でした。もうひとつ、「やめるとき」が効いてくるものがあります。著作権のほうです。

配信サービスに登録したら、著作権も一緒に管理されるんですか?

別物です。そして、やめ方も別です。
配信サービスが扱っているのは、原盤のほう
1曲には権利が2つあります。録音されたその音源そのものについての権利(原盤権)と、曲そのもの、つまり作詞・作曲についての権利(著作権)です。
TuneCore JapanもCD BabyもDistroKidも、配信で扱っているのは前者です。Spotifyから毎月入ってくるのは、原盤のぶんの収益。作詞・作曲のぶんは、別のルートを通らないと手元に来ません。TuneCore Japanの公式FAQにこう書かれています。
作品が著作権管理事業者(JASRACやNexToneなど)に管理されることで、初めて受け取ることが可能です。
その「著作権管理事業者」が、日本ではJASRACとNexToneです。

「登録」ではなく「移転」
JASRACは「登録」という言葉で語られますが、契約上はそうではありません。管理委託契約約款の第5条第1項です。
委託者は、その有する全ての音楽著作権及び将来取得する全ての音楽著作権(第37条の規定により委託者に帰属することとなったものを含む。)を受託者に移転し、自らの個別信託の信託著作権とする。
移転します。しかも「全ての」で、「将来取得する全ての」も含みます。この曲だけ預ける、という契約ではありません。
ただし、どういう使われ方について管理を任せるかは選べます。JASRACの区分はこうなっています。
| 管理委託範囲選択区分 | 含まれる利用 |
|---|---|
| 演奏権 | コンサート、イベント、上映・店舗BGM、店舗の生演奏、カラオケ歌唱 |
| 録音権 | 録音、映画、ビデオグラム、ゲーム、広告 |
| 出版権 | 出版 |
| 貸与権 | 貸与 |
| 複合 | 放送、配信、通信カラオケ |
| 外国地域 | 外国演奏、外国録音、外国出版 |
配信に関係するのは「複合」です。範囲は年に1度変更できる、と公式に書かれています。
費用についても誤解があります。信託契約を結ぶだけなら、入会金はかかりません。
| 区分(クリエイター) | 入会金 | 年会費 |
|---|---|---|
| 信託者 | 0円 | ― |
| 準会員 | 25,000円 | 4,000円 |
| 正会員 | ― | 12,000円 |
会員になるかどうかは、信託契約とは別の手続きです。
自分の曲を、自分で使うとき
ここが一番戸惑うところだと思います。公式FAQの回答です。
信託契約を締結すると、ご自身の作品を自分で使う場合でも、原則としてJASRACに所定の利用手続きを行ったうえで、使用料をお支払いいただく必要があります。
著作権が移転しているので、理屈としてはそうなります。ただし「自己利用の届出」をすれば、一定の範囲までは使用料がかかりません。プロモーション目的で対価を得ない場合、または実費の範囲内の対価しか得ない場合が対象です。
その「一定の範囲」には上限があります。
| 利用の形 | 上限 |
|---|---|
| 演奏会等 | 入場料 × 会場定員数 が400万円まで |
| 複製(CD・DVDなど) | 2,000まで |
| インタラクティブ配信 | 配信期間3か月まで、またはリクエスト1,000回まで(短いほう) |
配信は、3か月か1,000回で切れます。自分のサイトやSNSに自分の曲を置くという使い方が、無期限に無料なわけではないということです。開催地域・頒布地域・アップロード地域が国内であることも条件になっています。
やめるときは、3月31日しかない
この記事の主題に戻ります。JASRACも、やめたい日にやめられる契約ではありません。約款から3つ。
各個別信託の存続期間は、当該個別信託につき第3条第2項の承諾がされた日の翌営業日に始まり、同日から起算して2年を経過した後最初に到来する3月31日に満了する。
各個別信託の存続期間は、その満了の3か月前までに当該個別信託の委託者が受託者に対して書面により更新をしない旨の通知をしなかったときは、その満了の時に3年間延長されるものとする。
解除の通知が到達した日から起算して2か月を経過した後最初に到来する3月31日をもって終了する。
整理するとこうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最初の契約期間 | 承諾日の翌営業日から、2年経過後の最初の3月31日まで |
| 更新 | 満了の3か月前までに書面で通知しなければ、3年間延長 |
| 解除 | 通知が届いた日から2か月経過後の、最初の3月31日に終了 |
終わる日は、いつでも3月31日です。6月に解除を通知しても、終わるのは翌年の3月31日。更新しない通知を忘れると、そこから3年です。

3年……。

配信の解約が「いつでも止められる」のとは、だいぶ違います。
NexToneは、契約の形が違う
もうひとつの著作権管理事業者がNexToneです。違いは手数料率よりも、契約の形にあります。NexToneは信託ではなく管理委託契約です。公式FAQから3つ。
お申込みや管理委託契約締結に関しての手続き費用や年会費などは一切必要ありません。
管理委託契約が締結されても、作品届をいただくまで作品は管理されません。
管理委託契約は、最初に一度ご契約をいただければ、解約されるまで有効です。
作品届を出すまで管理されない。つまり曲単位で出せます。JASRACの第5条が「全ての音楽著作権」であることと、ここが一番違います。
委託する区分についても、公式サイトに「権利者はどの区分の管理をNexToneに委託するかを自由に選択できるようになっています」と書かれています。NexToneに委託しない区分についてJASRACとの契約がない場合は手続きが必要、ともFAQにあります。どちらか一方にすべてを預ける形ではない、ということです。
TuneCoreの著作権管理サービスは、その手前にある
ここで記事の前半に出てきた85%に戻ります。TuneCore Japanの著作権管理サービスは、自分でJASRACやNexToneと契約する代わりに、TuneCoreが窓口になる仕組みです。公式の記載を並べます。
| 項目 | 公式の記載 |
|---|---|
| 手数料 | JASRACから受け取る収益のうち、85%を還元します。当サービスの手数料は15%です |
| 譲渡期間 | 著作権管理の期間は、作品毎における審査の承認完了日より1年間になります |
| 更新 | 期間満了の3ヶ月前までに、管理停止の手続きをとった場合を除き、自動的に1年間延長されます |
| 終了後 | 管理停止完了後、対象作品の著作権はアカウント管理者に帰属します |
期間は1年。JASRACの最初の契約が2年以上であることを考えると短く、終われば戻ると明記されています。ここは率直に、わかりやすい設計だと思います。
なお、ほかで管理されている作品は申請できません。公式FAQには「既に著作権管理事業者に管理されている場合」は届出できない旨が書かれています。JASRACとTuneCoreの両方に出す、ということはできないということです。
ただし1つ、見落としやすい記載があります。
配信停止がされても、著作権の管理が取り下げられるわけではございません。
配信をやめても、著作権管理は止まりません。手続きが別です。TuneCoreをやめるつもりで配信だけ止めると、著作権のほうは1年単位で更新され続けることになります。
預ける前に、契約書を読んでほしい
ここからは、調べた話ではなく、僕が見聞きしてきた話です。
インディーズで自分で配信をやっている人が、よく分からないまま著作権の管理を外部に預けてしまって、あとから自分の思っている音楽の使い方ができなくなった。こういう話を、僕はたくさん聞いています。
自分のライブで自分の曲を演奏する。自主制作でCDを作る。自分の映像作品に自分の曲を使う。企業から直接「使いたい」と言われる。どれも、管理を預けた先の規程に従うことになります。この章で書いた「自分の曲を、自分で使うとき」の話が、そのまま効いてきます。
預けること自体が悪いわけではありません。悪いのは、契約書を読まずに預けることです。
最低でも、この4つは契約書と規程で確認してください。
- どの支分権・どの利用形態を預けるのか。全部なのか、選べるのか
- 契約期間はいつまでか。更新はどうなるか。やめるときの通知期限はいつか
- 自分で使うときに、どんな手続きがいるか。使用料がかかるか
- やめたあと、権利が自分に戻ると書いてあるか
どれも、この記事で引用してきた文書に書いてあることです。読めば書いてある。読まないから、あとで困る。

読んでも難しそうです。

わからなければ、契約する前に問い合わせてください。契約したあとに聞いても、期間は動きません。
で、登録するべきなのか
判断の軸はひとつだと思っています。配信以外で、その曲が使われる見込みがあるかどうか。
カラオケに入る、テレビやラジオで流れる、店のBGMになる、他人がライブで演奏する、誰かがカバーする。こうした使われ方の使用料は、自分では請求できません。著作権管理事業者を通すしかない。逆に、自分の配信だけで完結しているうちは、通さなくても配信の収益は入ってきます。
- 配信だけなら、急がなくていい
- 配信以外で使われ始めたら、JASRACかNexToneか、TuneCoreの著作権管理サービスか
- どれかを選ぶと、同じ作品を別のところには出せない
最後の点が、この記事で言い続けていることと同じです。入口の条件ではなく、出口の条件で決める。JASRACは3月31日、TuneCoreは1年と3か月前通知、NexToneは解約するまで有効。やめ方の形が、それぞれ違います。

配信より重い話ですね。

配信は止めれば止まります。著作権のほうは、止まる日が決まっています。
続けることが前提になっている、ということ
ここまで調べて思ったことを書きます。
年額制の配信サービスは、払い続けている限り配信される仕組みです。これは裏返すと、止めた瞬間に消えるということでもあります。
冒頭に書いたDirect Advanceも同じ構造でした。前払いを受けると、完済するまでリリースを取り下げられません。
配信は、一度出したら棚に並び続けるものだと思われがちです。でも実際には借りている状態に近いと感じました。家賃を払っている間だけ、その場所にいられる。
CDが主流だった頃と一番違うのはここかもしれません。プレスしたCDは、レーベルがどうなろうと手元に残ります。配信は残りません。

じゃあ、どうすればいいんですか?

出す前に、やめるときのことを一度考えておくことだと思います。それだけで選ぶ基準が変わります。
念のため書いておくと、これは年額制が悪いという話ではありません。TuneCore Japanのストア網羅性や日本語サポートには、その価格に見合う価値があります。ただ条件を知らずに入るのと、知って入るのは違う、というだけです。
僕がCD Babyを使っている理由
そのうえで、自分の選択についても書いておきます。
- 買い切りのサービスが好きだから。毎年の更新と決済を気にしなくていい
- 年額を上回るほど稼いでいないから。さきほどの計算の通り、年間49,000円を超えないなら9%のほうが安い
- 権利が自分に残るから。CD Babyの規約では非独占で、原盤も著作権もこちらに残る
- 始めた当時、ほかに選択肢が少なかったから。これは正直に書いておきます
ただし、CD BabyはLINE MUSICに配信できません。
さきほど「問題はLINE MUSICに届くかどうかの一点だ」と書きました。その一点を、僕自身が押さえられていないことになります。
いまのところは割り切っています。さきほど見た通り、LINE MUSICの順位は下がり続けていて、致命傷とまでは言えないからです。
ただ、これから日本のリスナーを本気で増やしたい人に、迷わず同じ選択を勧めるかというと、そこまでは言えません。国内ストアを全部押さえられるサービスがある以上、わざわざ落とす理由を自分で説明できないと困ります。
使っているから良い、とは書きたくないので、ここははっきり書いておきます。
どう選ぶか
用途ごとに整理します。
日本のリスナーに届けたいなら
TuneCore JapanかBIG UP!の二択です。LINE MUSIC、mora、レコチョクに並ぶのはこの2社だけでした。日本語のサポートがある点も実務では大きいと思います。
費用をかけずに、まず出してみたいなら
BIG UP!のフリープランです。0円で国内ストアに届きます。ただし月1タイトルの制限と、還元率70%(国内ダウンロードは83%)を理解したうえで。
曲数が多くて、海外が中心なら
DistroKidです。年$24.99で曲数無制限は、やはり安い。日本のストアに出ないことを割り切れるかどうかです。
一度出して、あとは放っておきたいなら
CD Babyです。買い切りなので更新を気にしなくて済みます。代わりにストリーミング収益から9%が永続的に引かれ続けます。
冒頭に書いた通り、僕が使っているのもこれです。理由を書きます。
途中でやめる可能性があるなら
LANDRです。解約しても配信が続き、pauseとresumeで出し入れできる設計は他社にありません。15%という対価をどう見るかです。
すでにLANDRでマスタリングしているなら
これは書いておきたいところです。僕はLANDRを使っていますが、配信ではなくマスタリングで使っています。
LANDRのマスタリングは、使うのであれば本当に良いと思います。そしてここが重要なのですが、LANDR Studioのプランには配信が含まれています。公式ヘルプにこうあります。
Unlimited distribution is also included in all levels of LANDR Studio, which start at $8.25 per month.
つまりマスタリングのためにすでにLANDR Studioを契約している人にとって、配信は追加費用ゼロということになります。配信単体で比べると$24からですが、マスタリングと合わせて使うなら話がまったく変わります。
僕が配信にLANDRを使っていないのは、単に別のサービスを先に使い始めたからです。マスタリングで契約している方であれば、一度配信機能を見てみる価値はあると思います。
なお日本在住で海外サービスを使う場合、W-8BENなどの米国税務書類が必要になります。提出しないと米国源泉のロイヤリティから30%が源泉徴収されます。英語の書類を自分で処理することになるので、ここも判断材料に入れたほうがいいと思います。
まとめ
今回の内容をまとめます。
- 日本のストアに届くのは、調べた5社ではTuneCore JapanとBIG UP!だけ。DistroKidは公式一覧に国内ストアが1社もない
- 「100%還元」は配信についての話。TuneCore Japanの著作権管理は85%で、著作権は期間譲渡される
- CD Babyは買い切りだが、ストリーミング収益から永続的に9%が引かれる
- 支払いを止めると、TuneCore JapanとDistroKidは配信が削除される。CD BabyとLANDRは続く
- 乗り換えは必ず「新配信を立ててから旧配信を止める」。TuneCore Japanは約72時間を推奨
- Spotifyは配信停止から90日で累計再生数が失われる。ただしフォロワーと月間リスナーは影響を受けない
- プレイリストは商品に紐づくため、旧配信を止めた時点で外れる可能性がある
- ISRCは録音に紐づく識別子で、権利者が変わっても変えるべきではない(IFPI)
- 乗り換えるときは、最初のリリースを出す前に既存のアーティストページURLを登録する。配信実績ができると編集できなくなる
- 配信サービスが扱うのは原盤。作詞・作曲ぶんの収益は、JASRACかNexToneを通さないと入ってこない
- JASRACは信託契約で「全ての音楽著作権」が移転する。終わる日はいつでも3月31日で、更新しない通知を忘れると3年延長
- TuneCoreの著作権管理サービスは1年単位。ただし配信を止めても、著作権管理のほうは止まらない
- 買い切り+9%と年額100%が逆転するのは、年間およそ49,000円(Unlimitedスターターの場合)
- LINE MUSICは2022年の調査で6位。順位は下がり続けているが、2026年の数字は公開されていない
配信サービスは、入口の値段で比べられがちです。でも本当に差が出るのは出口のほうでした。
やめるときの条件を読んでから、入る。それだけで選び方は変わると思います。
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