今回は、ランキング急上昇中のBillie Eilishさんの「Your Power」について僕が思ったことを書いてみます。
各ゾーンに感じたこと
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Billie Eilishさんといえば、なんと言っても生活ノイズの存在かと僕は思います。
宅録で通常嫌われるノイズを効果的に捉えていく手法は、独特な効果音を生み出します。
極度に悪いNS(ノイズと信号の関係性)はリスナーに音を伝える妨げになりますが、ある程度のノイズはスリルを生み出す可能性があります。
このイントロのノイズは、なんとも言えない緊張感を発揮していると思います。
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透き通る声、素晴らしいです。
囁くような声をマイクで捉えるのは、実際はとても難しい技術です。
この作品が宅録で録音されたかどうかは定かではありませんが、僕がもし宅録でこのような録音をするとなった場合以下のような方法をこころみると思います。
まずは、繊細な声を収録できるマイクを準備します。
初めて録音する歌い手さんにNEUMANN U87を使用する理由で紹介したようなコンデンサータイプか、真空管が入ったタイプのマイクを選択すると思います。
ダイナミックタイプのマイクを使用するよりも、格段に録音後の処理が楽になります。
次に、選択したマイクと相性の良いHAを選択します。
オススメ宅録HA(ヘッドアンプ)3選で紹介したようなヘッドアンプを選択していきます。
コンデンサーのマイクを選択した場合は、真空管の入ったチューブヘッドアンプ、チューブのマイクの場合はその逆にすることが多いです。
元気のあるイメージに録音されることが多いので、この曲のような綺麗な印象の曲では、AMS NEVE / 1073SPXは選択しないと思います。
エアコンのモーターなど電気的なノイズを遠ざける
ノートPCにバスパワー駆動する機材を使用すると、家庭用電気からくるノイズを避けられるメリットがあると思います。
もしくは、自宅のノイズ軽減電源タップの記事の中で解説したような、ノイズを可聴範囲からずらす電源タップなどを使用するなども良いかもしれません。
0:59
少しだけ、響きが増えています。
さりげないFX処理で、きっかけを作っています。
このような響きの場合、プレートタイプのリバーブが良いかもしれません。
プリセットなどでPLATEとかかれている物選んで、さりげなくかけてみると同じような効果をだすことができると思います。
ボーカルとの相性は良いリバーブです。
本物は大きな鉄の板を使用した機材です。
大規模なスタジオには現在も設置されています。
1:03
ギターの優しいローの響きがキックのかわりになっているようです。
優しいボーカルを邪魔しないように慎重な音選びをされているのを感じます。
少しだけ、ローに何かが追加されているような気もしますが、とてもさりげない良い音です。
1:16
この部分に緊急車両の通過音のような音が入っているのですが、もしかしたら宅録によって入ってしまった音なのでしょうか?
場面転換にとても役立っています。
このあたりから少しコーラスが足されてきます。
アコギを優しく叩いたような音がスネアのような存在になっていて、ビートを感じさせています。
1:48
少し楽器が増えました。
今までが音数が少ないのでとてもゴージャスな印象を与えます。
2:31
トレモロ効果でアレンジされています。
トレモロはギターによく使用されるエフェクターで、音の大小を繰り返すエフェクターです。
緩く効果をかけることによって優しい曲にも違和感なく使用できています。
3:01
リズムをお休みして、気持ちをリフレッシュです。
音を抜くことによってまた違ったアレンジを楽しむことができます。
低音はとても良質なベース音で支えられています。
とてもリッチな低音です。
4:00
息継ぎの音で曲が終わりました。
シンプルであるがゆえの説得力かと思います。
4:22
その後、22秒の黒が映像で続きます。
なんとも意味深なMVでした。
楽曲を聴き終わって思ったこと
音数が少ない楽曲では、小さな変化を使用してアレンジをおこないます。
曲中の小さな音量の変化や、定位(PAN)の設定、きっかけとなるエフェクターの設定などリスナーの耳を邪魔しないように、気付かれないように注意して変化させる必要があります。
その微量の変化を脳は感じている為、1曲を通してバランスの良いアレンジに感じることができます。
楽器の出し入れの激しい曲とはまた違がった、Mix師の腕の見せ所になると思います。
宅録の進化もすごいですが、ドローンの進化も日々どんどん良くなっています。
空からの映像が簡単に取り入れられるのは、MVにとってとても素晴らしい表現の進化だと思います。
それにしても、蛇とパワー、とても意味深な楽曲でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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